【対談】若手日本人タッグが激変するカナダ・トロントの不動産業界に挑む3つの理由

  

不動産価格の高騰が著しいカナダ・トロント。

ダウンタウンを中心に新たなコンドミニアム(高層マンション)が続々と建設される一方、郊外の戸建住宅の価格も上昇し続けています。
今回は、そんな天井知らずのカナダの不動産・建設業界に若手日本人タッグで挑む、仲眞サチ(ナカマ・サチ)さんと大野二千翔(オオノ・ニチカ)さんに対談インタビュー。

「住宅を買うベストタイミングは?」「安くていい家を買うコツって?」など、不動産購入・投資に役立つ情報はもちろん海外でバリバリ活躍したいと考える方にとっても目からウロコなお話が満載です!

トロントでの偶然の出会いからビジネスパートナーへ


(LT編集部)-トロントの不動産・建設業界に「若い日本人タッグが誕生した!」と伺い、本日お二人のお話が聞けるのを大変楽しみにしていました。

Q.まずは、お二人について簡単に自己紹介をお願いできますか?

大野二千翔(以下、二千翔):はい、私は現在、建設業界の職人として住宅や飲食店の補修などを行っていて、2021年12月に「OHVACS Canada Inc.」を起ち上げました。

トロントへは2017年にワーキングホリデーで訪れましたが、実家が建設業を営んでいることもあり、以前は日本で建設関係の仕事をしていました。そのとき、家業を継ぐにあたり独自の強みがほしいなと思ったんです。それで、”英語と建設業をかけ合わせよう!”と考えました。

実は地元が神奈川県なので、米軍基地から仕事を受けたり、フィリピン・セブ島へ留学した際に現地の建設業で働く方々から感銘を受けたことも重なり、彼らと一緒に働けば、日本の若い人にも刺激を与えられるんじゃないかと考えました。

ただ、彼らと働くには専門的な英語を学ぶ必要があったので、トロントのカレッジで建設システムエンジニアについて学び、卒業後トロントの建設業界で経験を積んだあと現地で起業し現在に至ります。

-なるほど。今回、タッグを組むきっかけを作ったのは二千翔さんだとか?

二千翔:そうですね、現在は不動産市場が熱いので、相乗効果を期待しトロントで活躍するリアルター(不動産仲介人)さんをWEBで探したら、偶然LifeTorontoのサチさんの記事を見つけて声をかけたんです。そしたら、サチさんの方から「一緒に組んでお仕事しましょう!」とご提案いただきました!

仲眞サチ(以下、サチ):うんうん、そうでしたね!建設関係の方とはお互いにクライアントを紹介しあえるといったメリットがあると思ったんです。

私は沖縄県出身で、現在はトロントの不動産会社に所属し不動産売買の仲介を行っています。トロントへは2012年に来て、カレッジ卒業後は医療秘書をしてたんです。でも、カナダでの生活を通し日本と異なる住宅市場を知ったことで“不動産投資”に魅力を感じ、2020年に初めて自分で投資物件を購入しました。

その後、より専門知識を身につけるため猛勉強して2021年にリアルターとしての資格を得たんですよ。

ーつまり、偶然にもお二人が仕事を始めた時期が似ていたんですね。

サチ:そうですね。それで、本当にたまたま私も日本人の建設業の方を探していたところ、二千翔さんから連絡を頂いたんです(笑)。

最初に電話で話した際に「とても真面目で仕事に情熱を持っている青年だなぁ」と感じ、日本人のビジネスパートナーとしてお仕事できたら楽しそうって思ったんですよ。

ーなるほど、逆に二千翔さんはどのような印象でしたか?

二千翔:正直、日系の若いリアルターさんがトロントにいてめちゃくちゃ驚きました! さらに2,30代という年齢の近さやお互いのキャリア的な発展性もあり、ここからビジネスを一緒に拡げたら面白いだろうなと感じましたね。

“日本流のサービス”と“地域コミュニティからの信頼”を武器に業界へ切り込む

ーお二人のお話を聞くだけでワクワクします!

Q.では、実際のお二人の具体的な仕事内容を教えていただけますか?

二千翔:はい、私は主にペインターとして、一般住宅や店舗の内装・外装を補修、塗装していますが、ハンディマンとしても出来る範囲でなんでも施工させて頂いております(応相談)。

先日は通堂ラーメンさんの天井を補修したんですが、以前からお世話になっている日系コミュニティからの依頼も多いですね。

約70時間かけた通堂ラーメンの天井の補修。作業中は店舗から鍵を預けられるほど地域コミュニティからの信頼も厚い。

実は一部のカナダの職人って、仕事が荒かったりすごく作業時間がかかる人もいるんです。なかには、当日現れない人も…。特に激安業者に依頼すると手抜きをされることも多い。そのため自分は“会社”として起業し、日本の建設業界で培った“丁寧で迅速なサービス”を提供できるように心がけています。

今後はサチさんのように信頼できる方々や職人さん達と提携し、“営業の窓口”としても機能しながら幅広い依頼に応えたいですね。特に自分は仕上げの綺麗さ・丁寧さに自信があります。「お客様に喜んでもらうこと」が本当に仕事のやりがいなんですよ。

作業内容によって本当に日数や価格は様々なので、お困りの際は一度お気軽にお問い合わせください!

Q.トロントには若い人にもビジネスチャンスがあると思いますか?

サチ:はい、そう思います。トロントにいる日系の方って男女問わずアルバイトなどから地道にお仕事をはじめて、日本的な質の高いサービスをもとに独立・起業される方も多いですよね。すごく素敵だと思います!

私自身の仕事は不動産売買の仲介業や不動産投資家として個人・法人問わずお客様から依頼を受けていますが、日本と全く異なる形式の不動産契約書類を日本語で丁寧に説明できるのは強みだと思います。

ノートパソコンや手帳など最小限のしごと道具を持ち、車の運転席をオフィスに街の変化を日々確かめている。

また、予定の空いている日は車を運転し、人気エリアや穴場エリアの変化を自分の目で確認し、クライアントへ最新情報を提供するなどサービスの質を高めています。

現在トロントでの住宅購入は本当に激しい競争下にあるので、クライアントの希望物件が購入できたときはとても嬉しいですね。

【サチさんのYouTubeチャンネル】

さらに、最近はYouTubeやSNSで日本語での情報発信を始めたんです!日系コミュニティともっと深く関わりたいですし、日系の方々にもっと不動産の投資の側面に気づいて頂きたいという思いから始めました。現在トロントでこうした活動をしている日系リアルターは他にいないと思うし、実際ソーシャルメディアからのお問い合わせもあるんですよ。

二千翔:実は…、僕の知り合いもサチさんのYouTubeを見て「私もリアルターやってみたい」って言ってたんですよ(笑)!

サチ:わぁっ、それは嬉しい!! YouTubeの動画では、Googleでも見つからないような”オーナーシップ”(個人や法人が土地・建物の全てを所有する契約形態)に関する紹介などを日本語で行い、内容にも結構こだわっているんです。

なので、分からないことがあれば気軽にホームページやSNSなどから相談してみてくださいね。

トロント不動産業界のQ&A

ーお二人には日系の方からの問い合わせも多いんですね!

Q.やはり現在のトロントの不動産業界には需要があると考えていいでしょうか?


二千翔:ですね。実は私の友人も昨年コンドミニアムを1部屋居住用に購入したんです。実は当時、類似物件より少し高い値段で購入したそうなんですが、現在の評価額はすでに購入額を超えているようです。でも少し失敗した経験もあるそうで…(笑)。

サチ:え、そうなんですか??

二千翔:はい、その友人はカナダに来た当初からずっと日本のクレジットカードを使ってたので、カナダでの”クレジットヒストリー”が全然なかったんです(笑)!結果、住宅ローンの金利が結構高くなり…。

サチ:なるほど…。クレジットヒストリーもそうですが、日本の方って「頭金が20%貯まったらリアルターに話を聞こう」みたいなケースが多いんです。でも、不動産購入を少しでも検討した時点で一度プロへ相談してみてください。

というのも、通常は不動産購入までに一年ほどかかるので、その間にクレジットヒストリーやファイナンスの状況を調整することも可能なんです。ほかにも「毎月この家賃を支払うなら、不動産を購入しよう」といった判断もより早い段階でできると思いますよ。

ーなるほど。ではここから、より具体的に現在のトロントの不動産業市場についてお伺いします。

Q.まず、不動産購入において最初に何に気をつけるべきしょうか?

サチ:そうですね…、まずはこまめに不動産価格の変動をチェックしましょう。今年の1・2月のトロントは、”住宅の在庫がほとんどない状態”だったんです。ここ最近はSpring marketとなり在庫も増えつつありますが、供給が追いつかず不動産価格が上昇し続け、2022年1月時点でのGTA(グレーター・トロント・エリア)内の全不動産の平均販売価格は約120万ドル(約1億1千万円)と言われています。

よくテレビのニュースなどで「前年に比べて不動産の平均価格が何%上がった」と見ますが、不動産購入を検討されるなら“必ず1,2ヶ月間での価格の変動率”をチェックしてください。リアルターはそうした最新情報を持っていますが、1年前なんかと比べたら物件によっては30%上がってることもあります。

二千翔:ホント、全然あり得ますね…(笑)。私の友人も常に自宅の不動産価格をチェックしてますが、購入時よりは確実に上がっていると言っていました。特にいまはコンドミニアムより、タウンハウスが上がってるとか。

サチ:そうですね、私は2020年に不動産投資としてタウンハウスを購入しましたが、現在の不動産価格はすでに約2倍になっていますね。

Q.なんと!! 特にどのエリアが人気でしょうか?

サチ: エリアでいうと、静かで住宅街が多いヨーク地域が人気のほか、大きなカジノリゾートがあるダラム地域などは不動産の価値がとても上がっていますね。ダラム地域からトロントへは、Go Transitの直通電車で約30分ほどで行けるんですよね。

その他には、トロントの西側のオークビル、バーリントンもとてもきれいな街で、ビーチや公園もたくさんあり落ち着いた雰囲気の人気エリアです。トロントのダウンタウンから車で1時間弱なので通勤圏内としても人気ですね。


二千翔:確かに。最近仕事でよくハミルトンに行くんですが、そのあたりも人気ですよね?

サチ:そうですね!ただ、現在はエリア的な人気だけでなく、カナダ政府が今後3年間で移民をさらに受け入れると発表したため、オンタリオ州全体でもさらなる不動産需要の増加が見込まれます。なので、不動産購入を考えているなら、早めに購入するのもおすすめですね。

Q.不動産購入におすすめのタイミングは?

サチ:不動産の価値は徐々に上がるため、「不動産を購入するのに一番いい時期は昨日」と言われています。現在のようにマーケットが激しく変化している状況では、投資として購入するなら早めに買うことをおすすめしますね。

実はカナダ政府は「リーズナブルな住宅を増やす」という計画を立てているのですが、具体的にいつ頃から、どんな家が、いくらで買えるのかも全くわかっていません。

Q.結局、どうすれば安くていい家が買えますか?


サチ:とても良い質問ですね(笑)! 皆さんやっぱり”新しくてリノベーション済の家”を探されるんですよ。だからそういう家は需要も価格も高いんです。その一方で、市場に出てから30日を超えているような“やや売れ残っている物件”は案外狙い目なんですよ。

というのも、そういった物件は建物自体に問題があるより、リスティングエージェントの提示価格が周辺の家より少し高いといった、“価格設定の悪さが原因”だったりします。そうなると必然的に需要が減り、最終的にリスティングエージェントの希望額より少し低めの金額で売りに出される場合があります。

また、その他では二千翔さんのようなプロによるリノベーション済の古いお家なんかも、品質と価格のバランスがいい状態で購入できる可能性がありますね。

ーなるほど、そうしたことをリアルターさんに詳しく相談できるんですね。

サチ:そうですね!最近は金利の低さも影響し、売家1軒に対して20件以上のオファー(購入希望)が入るのが普通です。そのため物件価格もつり上がっています。ただ、価格以外のことにも3,4点優先順位をつけておくといいと思います。

例えば、ロケーション。“学校が近い”とか“高速道路が近い”など、そうした条件を決めてから自分の予算と相談し家を探すと効率的だと思いますよ。

激しいトロントの不動産・建設業界にタッグで挑む3つの理由

-今日はためになるお話を聞かせて頂きありがとうございました!

Q.最後にお二人の今後のビジネスパートナーとしての目標をお聞かせください。

二千翔:まず1つ目の目標は、日本の方々がカナダやトロントの不動産・建設業界に注目してもらうきっかけになることですね!

カナダでの生活において”固定資産を持つ”ことって強い経済基盤を築く上でとても重要だなと痛感します。

サチ:そうですよね。ここでより豊かに暮らすには、メリットもデメリットも含め”投資や金融に関する知識”を得るのって大事。最近はカナダで住宅ローン(モゲージ)を組む場合のシミュレーションができるWEBサイトなんかもあります。

photo from Scotiabank

また、住宅ローンを組むにはクレジットヒストリーのほかに、カナダ市民またはPR保持者であることや、2年分のT4(収入証明書)やエンプロイメントレター、IDなどの必要書類を揃えるといった、先に知っておくべきこともあります。

※カナダ市民またはPR保持者でなくても住宅ローンを組んで不動産購入は可能ですが、その分金利が高くなります。またその場合、”Non Resident Speculation Tax” という税金が不動産購入金額の20%分追加発生します。ただし、この税金は不動産購入から4年以内にPRを取ればカナダ政府から返金されます。返金方法などの詳細は、会計士へお問い合わせください。

二千翔:まさにですね。それと、トロントと日本での不動産に対する価値観の違いを知ることも大切。

こちらでは、子どものための貯金の代わりに不動産投資をしたり、住宅ローンはなるべく上限額で組むといった文化的に大きな違いもあります。このあたりにも注目しながら、日系の方々がカナダ社会で強固な経済基盤を作るお手伝いができれば嬉しいですね。

サチ:また2つ目の目標は、日本的な品質の高いサービスや技術をカナダの不動産・建設業界に浸透させたい、ということですね。

二千翔:本当に!例えば、壁のペンキの色にもちゃんとトレンドがあって、現在は若干マットで薄いグレーが、落ち着いた高級感を演出するので人気です。そうした色を使ってリノベーションすると、不動産価値が上がることもあります。

非常に細かい気配りですが、現場の状況を見ながらクライアントにそんなアドバイスをすることもあるんですよ。サチさんもそうだと思いますが、我々の強みってこうした日本的なきめ細やかな心遣いなのかなって。

サチ:私もそう思います。例えば、英語の難しい契約書を理解する大変さや心情って私達だから共感できるし、クライアントの心に寄り添ったサービスができると思います。


その意味では3つ目の目標は、「日本の若い力でトロントをもっと盛り上げていきたい!」と思うんですよね。

先程も話したように、日系コミュニティの人々と協力しながら信頼関係を築けば、日本の若い人達が活躍できるチャンスが、トロントにもっと生まれと思うんです。

二千翔:そうそう!それこそがビジネスパートナーとして協力する最大の理由であり目標かもしれませんね。

サチ:皆さんそれぞれの専門性を生かし、より多くの人と深く関わることで、一人では見えなかった未来も見えると思います。なので、ぜひ私達とトロントを盛り上げていきたいと思った方は、お気軽に声をかけてもらえると嬉しいですね。

二千翔:はい!皆さんと協力しながら、トロントを若い人達の力がもっと活かせる場所になるよう頑張りたいですね。皆様ぜひよろしくお願いいたします!!

(聞き手:惠藤修平)
(撮影:松田 画)

2人のプロフィールをチェック!

ということで、今回はカナダ・トロントの不動産・建設業界で新たに生まれた日系若手タッグにインタビューをしました!

不動産の購入や補修の依頼はもちろん、「若い力でトロントを盛り上げたい!」「この2人とコラボレーションし海外で活躍してみたい!」という方もぜひコンタクトをとってみては?

それぞれの連絡先は以下のプロフィールを確認してみてください。

大野二千翔(オオノ・ニチカ)


神奈川県出身。2017年にワーキングホリデーでカナダ・トロントへ。Seneca college でBuilding system engineering technician を学び、卒業後はトロント建設業界で経験を積む。

家業の建設業を継ぐため日本の建設業界での経験もあり、「英語×建設業界」を自身の強みにしようと決意。その後、日本の建設業界では、東南アジアからの労働者が低賃金で雇われていることや、不当労働・パワハラに直面していることを知り、彼らが豊かに働ける環境をつくりたいと考えるように。

2021年には住宅や店舗などの補修を行う「OHVACS Canada Inc.」をトロントで起業し、現在は、日本流の丁寧な仕事をトロントの建設業界に広げるため、日系コミュニティからの信頼を得ながら活躍、共に働ける人も募集中!今後はカナダと日本での事業展開を目指している。

【二千翔さんへのメッセージは以下へ⬇】
【公式HP】
【E-mail】info@ohvacs.ca
【Instagram】@ohvacs

仲眞サチ(ナカマ・サチ)

沖縄県出身。2012年にカナダ・トロントへ。George Brown Collegeを卒業後、現地のドクターズオフィスで医療秘書として数年間働くが、日本と違うカナダの家への魅力と不動産投資への憧れから、1年半の猛勉強を経て、オンタリオ州のリアルエステートセールスパーソンの資格を取得。

現在はオンタリオ州で5,000人のリアルターが所属するトロントの不動産会社「Right At Home Realty Inc.,Brokerage」に所属しソロエージェントとして働き、トロントのダウンタウンやGTA内の住宅物件の売買・リースを扱う。

自身も不動産投資家であり、時間がある日は車を運転し同州内の様々な地域へ赴き、投資物件や街並みを自分の目で確かめてリサーチ。クライアントは日本人のみならず、地元の方や若い世代の方も多数。
【サチさんへのメッセージは以下へ⬇】
【公式HP】
【E-mail】realestatebysachi@gmail.com
【Instagram】@realestatebysachi
【Phone】647-648-3308

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