先日NBAファイナル進出を果たした、我らがトロント・ラプターズ。
photo from Toronto Raptors
実はトロント・ラプターズには、ファンとして有名な1人のおじさんがいます。
photo from Nav Bhatia Superfan on Instagram
ナヴィ・バティアさん。
チームの選手たちにも、スタッフにも愛される、ファンの間でも有名な人物です。
ラプターズが愛するあるファンの物語
photo from Nav Bhatia Superfan on Instagram
バティアさんは、ターバンを巻いて、試合会場の前席で大声で声援を送る姿が印象的なインド系のおじさんで、
「SUPER FAN(=大ファン)」というその愛称の通り、長年ラプターズを応援しています。
ラプターズが好きなLTスタッフの1人も、このシーズン中に試合会場で見かけて写真を撮ってもらったことがあります。
そのスタッフ曰く、一緒に写真を撮ってもらうと、「写真を撮ってくれてありがとう。一緒にラプターズを応援しようね!」と話してくださったとのこと。
とても気さくな人柄で、ファンの中でもいつも人気です。
photo from Nav Bhatia Superfan on Instagram
実は今回、NBAファイナル進出し、世間の注目がラプターズに集まったことで、トロント出身のアメリカCNNのリポーターのムハンマド・リラさんが、このおじさんについてツイッターで話題にしました。
photo from Muhammadlila.com
トロント出身。
CNN・CBC・ABCなどの北米主要メディアで活躍。
世界各地域や紛争を取材し、世界のリアルな情報を伝えているフリーランスのジャーナリスト・リポーター。
トロント・ラプターズのファン。
リラさんによるその15回に及ぶ長いツイートが、
いま世界中でシェアされ話題になっています。
そのツイートは、移民大国カナダ、そして多民族都市トロントの素晴らしさを象徴する物語として、
また、アメリカをはじめ、国や人種間の摩擦が多い昨今の世界情勢に対し、あらためて気づきをを与えるものとして、
多くの人たちを感動させています。
今回そのツイッター全文を意訳してご紹介します。
ムハンマド・リラ氏のツイッター全文意訳
With the #Raptors about to hit the global stage, I’m going to share a story about what makes Toronto, and Canada, so special. It’s about a guy you’re going to be seeing a whole lot of.
A Thread.
[Hint: It's about racism, sports, and why you'll end up cheering for ?]
— Muhammad Lila (@MuhammadLila) 2019年5月26日
国際舞台で戦うラプターズにまつわる1つの物語として、
何がトロントを、そして何がカナダを、
そうも特別なものにしているのかを語る、
とある男のお話をシェアしたいと思います。
その人は、あなたがこれからラプターズの試合でよく見ることになる男です。
(ヒント:これは人種差別、スポーツ、そして最後になぜカナダを応援したくなるかというお話です。)
When you think of the Raps, you probably think of Drake on the sidelines, as the team’s biggest fan.
The thing is, he’s not.
In Toronto, we love @Drake. But there’s someone else who symbolizes everything great about Toronto and Canada. pic.twitter.com/qWPCs5TRHK
— Muhammad Lila (@MuhammadLila) 2019年5月26日
ラプターズといえば、いつもコートの最前席で応援しているドレイクが、最も有名な大ファンとして思い出すのではないでしょうか。
でも、彼の事ではありません。
もちろん、わたし達トロント人はドレイクが大好きです。
しかし、他にもトロントとカナダの素晴らしさを象徴する人がいるのです。
This is Nav Bhatia. You're going to see a lot of him waving his towel on TV.
He's 67 years old and still cheers louder than your teenage nephew. If you've ever been to a Raps game, you can't miss him.
But here’s what most people don’t know: pic.twitter.com/3S8gs0PS0T
— Muhammad Lila (@MuhammadLila) 2019年5月26日
それがこのナヴィ・バティア。
あなたはこれから、タオルを振って応援する彼の姿を、何度となくTVで見かけることになるでしょう。
彼は67歳。10代の甥っ子よりも大声でいつもチームを応援します。
1度でもラプターズの試合を観たことがあるなら、彼に見覚えがあるはずです。
でも、ほとんどの人が知らないことがあります。
He’s been at every single Raptors home game since 1995.
That' right: Every. Single. One.
Through Damon, Vince, CB4, a zillion coaches, blackouts, blizzards, you name it.
Big deal, right? Wait, there’s more. pic.twitter.com/zdjf6vf4Ck
— Muhammad Lila (@MuhammadLila) 2019年5月26日
彼は、1995年以来ずっと、
ラプターズのすべてのホーム試合を、会場で応援しているのです。
そう、「すべて」、のホーム試合です。
ダモン、ヴィンス、CB4(選手の名前)、そして多くのコーチたち、暗闇の試合も嵐の試合も、どんなものも見ているんです。
すごいでしょう? 待って、まだあります。
Bhatia came to Canada as an immigrant in the ‘80s with almost nothing. As a brown turbaned guy with an accent he couldn’t get a job as an engineer, so he wound up working as a car salesman at dealership in a rough part of town.
Devastating, right?
Nope. Not for Nav. pic.twitter.com/d6qLhsJ4Ur
— Muhammad Lila (@MuhammadLila) 2019年5月26日
バティアは、80年代にほとんどなにも持たずに、このカナダに移民してきました。
茶色のターバンを巻いたアクセントの強い男にとって、夢だったエンジニアの仕事を得ることは難しく、
彼がやっとの末に得た仕事は、
売り上げが出そうにもない治安の悪いエリアでの、車の販売代理店の営業の仕事でした。
普通だったら、落ち込んでクサっちゃいますよね?
でも、彼は違いました。
He sold 127 cars in just ninety days. It’s a record that stands to this day. He did it the old-fashioned way, by being honest (and yes, some catchy radio ads). He was so good that he eventually bought the dealership. Crazy, right.
Guess what’s crazier? pic.twitter.com/K1so1Jagdq
— Muhammad Lila (@MuhammadLila) 2019年5月26日
彼はわずか90日で、なんと127台の車を売りました。
この記録はいまだに破られていません。
彼は昔ながらのやり方で、誠実な人柄によって、
(もちろんキャッチーなラジオ広告もやりましたけど)車を販売しました。
彼の売り上げはすごく良くて、やがて販売代理店自体を買い取るほどになりました。
クレイジーでしょう?
でももっとクレイジーな事に、
He later bought another.
Back in 1995, when the businesses weren’t doing well, he still bought season's tickets. They cost a lot, but he didn't care. He loved the team. Even those ugly purple dinosaur logos. He wore them with pride. pic.twitter.com/b2Yt9LqKis
— Muhammad Lila (@MuhammadLila) 2019年5月26日
その後にもなんと彼は、もう1つ別に車の販売代理店を買い取ったんですよ。
さて、1995年に話を戻しましょう。
その頃は、彼のビジネスは上手くいっていない時でした。
それでも彼はラプターズの全試合のチケットを買いました。
すごい金額です。でも彼はお金なんか気にしませんでした。
彼は本当にラプターズが大好きだったんです。
当時はダサい紫色の恐竜のロゴでしたが、彼はそれでも誇りを持ってそのユニフォームを着て応援しました。
If you go to a Raps game, you’ll see his big ass huge goofy smile, on the baseline.
When you’re an immigrant, nothing feels more Canadian than waving a Canadian flag while cheering your team. Sports is the great equalizer. pic.twitter.com/2S4pP1dZo8
— Muhammad Lila (@MuhammadLila) 2019年5月26日
もしラプターズの試合を見に会場に行ったら、
きっと最前列にいる彼の大きなお尻と、愛嬌のある笑顔を見ることになるでしょう。
カナダの旗を振ってお気に入りのチームを応援する。
あなたがもし移民ならば、カナダの一員と感じるのに、これ以上の事はないでしょう。
スポーツは、誰もを平等にします。
In any other city (looking at you, MIL), a guy like Nav might stand out. But not in Toronto. We’re a place where immigration works. Multuculturalism works. Ask anyone who’s been to a Raps game and they’ll tell you it’s the most diverse place in the world.
— Muhammad Lila (@MuhammadLila) 2019年5月26日
もし他のチームの都市だったら(ミルウォーキーとかね)、ナヴィみたいな男は目立つ存在だったかもしれません。
でもトロントは違う。
わたし達のトロントは、多くの移民が働く場所。多文化主義が機能している街。
ラプターズの応援に来てる人に聞いてみてください。
きっと彼らはこういうでしょう。世界でもっとも多様性に溢れた場所だと。
You’ll hear a dozen languages, see black guys in dreads hanging out with Korean guys eating poutine. In other cities, that would be weird.
In Toronto, it’s perfectly normal. It’s how the 6ix rolls.
Take this pic. How many colors/ethnicities can you see? At least a dozen. pic.twitter.com/ni5zxD5SZu
— Muhammad Lila (@MuhammadLila) 2019年5月26日
この街では、数十種類もの言語を耳にするし、
ドレッドヘアの黒人の男が韓国系の男とつるんで、プーティンを食べてるのも見かける。
きっと、他のチームの都市からしたら、奇妙なことに見えるでしょう。
でもトロントにとっては、完全に普通の事なんです。
そういうふうに、the 6ix※の街は回っているんです。
この写真を見て。
どれだけの民族と肌の色が見える? 少なくとも十数種類でしょう。
※トロントの愛称
So when you see a guy like Nav, you’re not just looking at a superfan.
You’re looking at the story of Toronto.
It’s why a guy like Charles Barkley loves the city. It's why @Shaq @KingJames and others others come here every summer.
It’s what makes Canada special. pic.twitter.com/uXekDkPKvY
— Muhammad Lila (@MuhammadLila) 2019年5月26日
だからもし、ナヴィみたいな男を会場でみかけたら、それはただの大ファンの男をみてるだけじゃないんです。
あなたは、トロントの街の物語を見ているんです。
だから、チャールズ・バークレイ※はトロントが大好きなんです。
だから、シャクーやレブロン・ジェームズ※は毎年夏にはこの街に帰ってくるんです。
カナダを特別にしているのは、それがあるからなんです。
※すべて黒人の元NBA選手
That while the world is building walls, Canada is building bridges.
A guy like @superfan_nav is our best symbol of that.
He’s not just a guy from Toronto. He *is* Toronto.
A place where people work hard, make it, and still care enough to give back. pic.twitter.com/K5do9KqjgE
— Muhammad Lila (@MuhammadLila) 2019年5月26日
世界が壁を作っている間に、カナダは架け橋を作ってる。
ナヴィみたいな男は、その一番の象徴です。
彼はトロントの男ではない。トロントそのものなんです。
そこでは、人々は一生懸命に働き、何かを成し遂げ、そしてなお、誰かに何かをしてあげたいと思ってる。
When his dealerships started doing better, he could’ve called it a day.
Instead, every year he spends $300K of his own money to send kids – mostly from brown, immigrant families – to Raptors games.
He does it to show them they belong.#Raptors pic.twitter.com/Sav5gKTNdK
— Muhammad Lila (@MuhammadLila) 2019年5月26日
彼は車の販売代理店の仕事が順調になってから、その仕事を引退することもできました。
でもそうせずに、毎年稼いだ自分のお金30万ドル※で、
子どもたち(主に褐色人種系の移民の)をラプターズのゲームに招待しているんです。
そうすることで、彼は子どもたちに、自分がカナダの一員である事を感じてもらおうとしています。
※およそ2500万円
Basketball can be more than just a game.
When the finals tip-off on Thursday, the world is going to see Toronto being Toronto: Diverse, strong, caring.
And there’ll be a 67-year old Sikh turbaned guy leading the charge.
And you know what, we're okay with that.
END pic.twitter.com/7bPtkutTP8
— Muhammad Lila (@MuhammadLila) 2019年5月26日
バスケットボールは、ただのスポーツの試合ではありません。
この木曜日にNBAファイナルが始まったら、世界はトロントらしいトロントを目撃することになるでしょう。
多様で、強く、互いを思いやる。
そして、そこには応援を盛り上げている、67歳のシーク教のターバンを巻いたインド系の男がいる。
これが、分かる?
わたし達トロントは、それでいいんです。
終わり。
最後のWe’re okay with that.という一文には、「わたし達は宗教や人種の違いを気にしないんだ」という強い思いが感じられます。
最後にリアさんは、こんなツイートを加えています。
Just got off the phone with Nav. I asked him what he'd tell the world about Canada, he said:
"Other counties might be richer, but they’re not richer in mannerisms, politeness, or looking after each other.. And the country south of us has a lot to learn."
— Muhammad Lila (@MuhammadLila) 2019年5月26日
今ちょうど、ナヴィとの電話を切ったところ。
彼に、カナダについて世界に伝えたいことある?と聞いたんです。
そしたら、彼はこう言いました。
「他の国々は、カナダよりもっと豊かかもしれない。でもマナーや礼儀、お互いを思いやることについては、カナダに比べて欠けてるね。
そしてわたし達カナダの南にあるあの国は、学ぶことがもっといっぱいあるよ。」
トランプ政権以降、人種差別や対立が進むアメリカに対する痛烈な皮肉も込められた15に及ぶツイート。
そこからは、バディアさんという1人のラプターズファンのおじさんを通して、リラさんが伝えたかった多民族と文化が共存しているトロントという都市の素晴らしさが見えてきます。
トロント、そしてカナダに住む日本人皆さんにとっても、このリラさんの一連のツイートにはしみじみ感じられるものがあったのではないでしょうか。