•    

白血病と闘う遠藤翼選手、トロントFCと1日契約—ファンへのメッセージと引退セレモニー

  

既にご存知の方も多いかと思いますが、トロントFCは遠藤翼選手と1日限定の契約を結び、公式にトロントFCの選手としてキャリアに幕を下ろすことを2025年7月11日に発表しました。

そして、遠藤翼選手は翌日12日に行われたアトランタ・ユナイテッド戦(BMOフィールド)で、ファンに向けて引退セレモニーを行いました。

取り上げるのが少し遅れてしまいましたが、今回は、遠藤翼選手のファンへのメッセージ、そしてSNSに投稿された引退セレモニーの写真や動画などを集めてみました。

トロントFCファミリーやファンへのメッセージ

遠藤翼選手は2016年のMLSドラフト1巡目でトロントFCに加入、同年3月にプロデビューしました。メジャーリーグサッカーで日本人がドラフト1巡目で指名されたのは遠藤翼選手が史上初ということで、当時話題になりました。

2017年3月6日にプロ初出場し、トロントFC在籍中、3年連続でカナディアン・チャンピオンシップ(2016年、2017年、2018年)を獲得することに貢献しました。2019年6月26日、BMOフィールドで行われたアトランタ・ユナイテッド戦では3-2で勝利しましたが、試合開始わずか29秒で遠藤翼選手がゴールを決め、史上最速ゴールの記録を樹立しました。

トロントFCで6シーズン(2016~2021年)を過ごし、全大会で80試合に出場し、10ゴール5アシストを記録しています。

その後、2021年12月に急性未分化型白血病と診断された遠藤選手。化学療法とリハビリを経てトレーニングができるまで回復しましたが、「身体がサッカーの要求に耐えられない」との判断から今回の引退を決断しています。

以下、遠藤翼選手とトロントFCのInstagramに投稿された英語のメッセージの意訳になります。

トロントFCファミリー、ファンの皆さん、そして私の人生を形作ってくれた美しいサッカーへ 

プロサッカー選手として引退する決断をしました。喜びと寂しさが交錯する瞬間ではありますが、プレーへの情熱を失ったわけでは決してありません。3年間にわたる急性未分化型白血病との過酷な闘いの末、今の私の身体には競技が求める過酷な負荷を支え続けるだけの力が残っていないのです。

トロントFCのクラブ関係者、ファンの皆さん、スタッフ、そしてチームメイトの皆さん――家族の一員として温かく迎え入れてくださったことに、心の底から感謝しています。ここ2年間は、ピッチに戻るために、誰にも負けない覚悟で、ひたすら自主トレーニングに励んできました。

皆さんの応援と思い出は、これからも私の人生を支え続けてくれるでしょう。本当にありがとうございました。

治療の一歩一歩、リハビリの毎ラウンド、そして直面したすべての挫折は、ひとつの目標に突き動かされていました。それは、ライトが灯るBMOフィールドに再び立つこと。しかし、再発と慢性GVHD(慢性移植片対宿主病)との長期にわたる闘いを経て、最高レベルでのプレー復帰はもはや現実的ではないという結論に、心ならずも至りました。

がんと向き合ったとき、私はただサッカーを続ける以上に大切なことを学びました。人生とはグラウンド上で何をするかだけではありません。この経験を通じて、当たり前だと思っていた「今ここにいること」「生きていること」、そして「勝ち負けを超えた心の安らぎ」の価値を、改めて深く噛みしめるようになりました。

外から見れば元気そうに見えるかもしれませんが、慢性GVHDは決して軽いものではありません。筋膜のあらゆる箇所に及ぶしつこいけいれんや炎症、その他さまざまな副作用に苦しみ、歩くことも、座ることも、休むことさえままなりません。痛みを和らげるだけではなく、いかにして「質の高い生活」を維持するかが大きな課題です。最終的に私の目標は、ただ試合に戻ることではなく、“よく生きること”そのものへと変わっていきました。

この視点の変化は計り知れないほど困難でしたが、本当に大切なものが何かを教えてくれました。これまでのキャリアを通じ、そしてとりわけがん治療の最中に寄せてくださった皆さまの変わらぬご支援に、心から感謝申し上げます。

戦いはまだ終わっていません。皆さんからの絶え間ない励ましと信じてくれる気持ちは、私が最も暗い時期を乗り越えるための純粋な原動力でした。遠くからでも、いつもそばにいてくれたことに心から感謝しています。これからの未来にワクワクしていますし、これは「さよなら」ではありません。またいつか道が交わるその日まで、どうか幸運を。そして私はいつまでも、皆さんを応援し続けます。

Once a Red, always a Red.

— 翼

 

遠藤翼選手、引退セレモニーの様子

トロントFCゼネラルマネージャーのJason Hernandez氏は「トロントFCにとって、翼が復帰し、正式に引退することは本当に特別な瞬間です。クラブは、6年間にわたる彼の貢献を称え、彼のキャリアを祝福したいと考えました。土曜日にBMOフィールドで翼を称える機会を得られることは、ファンにとって忘れられない思い出となるでしょう。」と声明でコメント。

引退セレモニーは7月12日(土)にBMOフィールドで行われました。(アトランタ・ユナイテッド戦)遠藤選手は試合前にピッチ上で表彰され、公式試合球を手渡しました。

以下がその引退セレモニーの様子です。トロント在住の方は実際にセレモニーを観に行ったという方も多いかもしれません。

またお会いできる日まで

トロントFCの声明の中で遠藤翼選手は「これからの未来にワクワクしていますし、これは別れではありません。またお会いできる日まで、幸運を祈ります。そして、私はこれからもずっと皆さんを応援し続けます。」と語っています。

SNSでは「幸運を祈るよ、友よ。ピッチに立った時は、いつも全力を尽くしてくれた。」「遠藤さんの今後のご活躍を祈っています。トロントよ永遠に」「クラブレジェンド」など、多くのファンからトロントFCでの遠藤翼選手の功績に感謝の声が見られました。

引退後の遠藤選手の活躍にも期待したいですね。

Topへ