トロント・ブルージェイズは今年32年ぶりにワールドシリーズ進出。結果として、ロサンゼルス・ドジャースに僅差で敗れたものの、多くの人に感動を与えてくれました。
Friendships created. Bonds strengthened. Memories made.
Thank you for coming on this ride with us 💙🇨🇦 pic.twitter.com/P6Mrd8aWrs
— Toronto Blue Jays (@BlueJays) November 7, 2025
そのワールドシリーズ期間中、毎週土曜日に行われているバスケットボールサークル「ライジング・サンズ」に向かっているときに、サークル仲間の上中亮佑さんから突然「今日行けなくなるかも」と連絡が入りました。
その理由を聞くと、ワールドシリーズ第7戦のチケットをギリギリで手に入れたからということでした。なんと、立ち見席にも関わらずその価値は2,200ドル。
「一生に一度の経験と思い、かなり悩みましたが、経験に投資する気持ちで購入に踏み切りました!」と、上中さんは言っていました。

(ワールドシリーズ第7戦をロジャースセンターで観戦した上中さん)
トロントで暮らしていると、上中さんのように経験に投資する日本人が少しずつ増えてきているように感じます。
トロント、グローバル都市としてのアイデンティティの確立
トロントはここ数年、世界的なイベントの開催地として存在感を高めており、「グローバル都市」としてのアイデンティティを確立しつつあるように思います。
例えば、約1年前の2024年11月にはテイラー・スウィフトの「ザ・エラス・ツアー」が、ブルージェイズがワールドシリーズで戦った同じ会場、ロジャーズ・センターで開催されました。
総収益が20億ドルを超えると言われるツアーで、テイラー・スウィフトはロジャーズ・センターで6回もの公演を行いました。東京公演(2024年2月7日~10日)の後、ツアーで世界各地を巡る中でも、トロントは公演日数が多かった都市の一つに挙げられます。
また、スポーツ界を振り返れば、2019年にNBAファイナルでトロント・ラプターズがサンフランシスコのゴールデンステート・ウォリアーズを見事に倒し、優勝したことも記憶に新しいです。
そして2025年、ロジャーズ・センターでワールドシリーズ第1・2・6・7戦が開催され、トロントは再び世界中のエンタメの注目を集めました。
Thank you for being the best fans in baseball 💙 pic.twitter.com/XKIMMdRGP7
— Toronto Blue Jays (@BlueJays) November 5, 2025
ただ、スポーツとコンサートの大きな違いは、スポーツがより幅広い層を惹きつける点にあります。コンサートの場合は、主にそのアーティストのファン達が会場に集まりますが、スポーツは生観戦でも、テレビでも多くの人が一体となって応援できます。
今回のワールドシリーズでは、進出の過程で、スポーツチームの世界的ブランドともいえるニューヨーク・ヤンキースをブルージェイズが撃破。その際、街が大きな熱狂に包まれたことも記憶に新しいですが、ワールドシリーズ期間中は、まるでトロントの街全体がブルージェイズの応援をしているかの様に感じられました。
トロントのDONDON居酒屋で働いている藤谷洸(ふじたに・ひろ)さんによると、第6戦の際には現地の熱狂具合を取材するために、日本のテレビ局のクルーが来店したそうです。
藤谷さんは、「クルーの方は店にいたブルージェイズファンの人たちに話を聞いたり、ブルージェイズがヒットを打つたびに始まる “Let’s go Blue Jays!” のチャントを撮影していました。」と語っていました。
惜しくも今回のワールドシリーズではブルージェイズは優勝を逃しましたが、トロントは「グローバルの都市」としてアイデンティティを証明し続けています。
2026年はトロントがFIFAワールド杯の開催都市として世界中のファンを迎える予定
The sound of @FWC26Toronto brought to life by @HillKourkoutis for the #FIFAWorldCup 🎶🇨🇦
Listen to Toronto's Sonic ID track ⤵️
— FIFA World Cup (@FIFAWorldCup) October 20, 2025
この熱さは来年にも繋がる事です。トロントは2026年、FIFAワールド杯の開催都市の一つとして、世界のファンを迎え入れる予定です。同じくバンクーバーでも開催が予定されており、カナダにとっても、スポーツイベントの開催地としての究極の試練になるでしょう。
トロントではBMO Fieldで試合が行われますが、このスタジアムはこれまでも北米プロサッカーリーグの決勝戦「MLS CUP」や、カナダのアメフトリーグ(CFL)の決勝戦 「グレイカップ」など、国内でも最大級のイベントが開催されてきた場所です。
しかし、ワールド杯の様な世界規模の大会を迎えるのは今回が初めて。BMO Fieldでは大会に向けて1万7,000席の仮設席が追加され、4万5,000人以上の観客が収容できる様になる予定です。この数字は、先日ロジャースセンターで開催されたブルージェイズ第7戦の入場者数(44,713人)を上回ります。
世界的なイベントを開催するには色々と乗り越える壁があります。
開幕は来年の夏と目前に迫っており、準備は時間との戦いです。さらに、「ただでさえ渋滞が深刻なトロントで、FIFAワールド杯の期間中、どうしたらより多くの人がスムーズに移動できるようになるのか?」という点については、多くのトロント市民が不安を抱えています。
今回のワールドシリーズ第7戦の後、トロントの終電延長が無いことへの批判が殺到したことを受け、トロント市交通局の理事会が特別イベント用の新たな交通政策を発表しました。
失敗は次の成功に繋がるチャンスです。スポーツ界がますますトロントに注目していく中、上中さんの様な「経験に投資する」日本人もこれからますます増えていくことでしょう。


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