9月からオンタリオ州の”小学校”でコーディングや個人資産の授業開始

  


2020年6月23日(火)、オンタリオ州は15年ぶりに小学校の数学の授業カリキュラムを改定すると発表しました。

この改定には、個人の財務管理やコーディングといった将来に役立つ授業が組み込まれるとのことです。

今回は新しいカリキュラムの概要をまとめましたので、ぜひご覧ください。

15年ぶり改定のカリキュラムが9月から始動予定


数学のカリキュラム改定の発表に際し、オンタリオ州のスティーブン・レッチェ教育大臣は以下のように述べました。

「10年以上にわたり、あまりにも多くの学生が
日常的な数学や金融リテラシー、計算能力を欠いていた。」

上記の発言のように、オンタリオ州の小学校での数学の授業のカリキュラムは、2005年からアップデートされていませんでした。

また、州政府のホームページでは、今回の改定の目的が記載されています。

The curriculum was developed over two years in consultation with parents, math educators, academics and math education experts,
and is designed to reverse a decade of declining math scores. It will be available to students across the province beginning in September 2020.

「このカリキュラムは、親、数学教育者、学者、数学教育の専門家との協議を経て、2年間かけて開発されたもので、10年間続いた数学の成績の低下を逆転させることを目的としている。2020年9月から、同州の学生が利用できるようになる。」

オンタリオ州政府公式サイト

つまり、今回の改定は基礎的な学力の向上を目的とし、専門家達と協議しながら2年がかりで考えられてきたようです。

また、2020年9月から授業を開始予定のようですね。

新カリキュラムの対象は主に小学生


改定される数学のカリキュラムの対象は、グレード1~8に属する生徒達とされています。

これは、日本でいう小学1年生から中学1年生頃までです。

カナダの教育プログラムでは、子どもたちは幼稚園からグレード12まで(5~17歳)で分けられています。

エレメンタリースクール(日本の小学校)では、グレード1~7の学生などが在籍し初等教育を受けます。

なお、グレード5~8の学生については、ミドルスクール(日本の小学校と中学校の間にあたるもの)で、ハイスクールへの進学準備などを行います。

※ミドルスクールで受け入れるグレードについては、学校や地域により異なります。

いずれにしろ、今回の改定により人生における学習基盤ともいえる初等教育に大きな変化があったということですね。

子どもたちの将来に役立つ授業内容

Finance and financial performance concept illustration


改定された数学のカリキュラム内容ですが、下記のような授業内容に注目が集まっています。

●コーディングやコンピュータプログラミングスキルの授業

●低学年から始める個人資産などを含む金融リテラシーの授業

これを見るだけでも、将来的に役立つ内容にフォーカスしていることがわかりますね。

授業を構成する6つの要素とその内容

改定される数学の授業全体は、6つの要素で構成されます。

また、それぞれのグレード(学年)に合わせた内容で各要素を学ぶことになります。

以下は、州政府が公式に発表している授業内容の抜粋です。

【数字(Number)】
例えばグレード1では、50までの数字を用いて数字の使い方を理解します。

一方、グレード8では比率や整数、分数、小数、整数、指数などに取り組みます。

【代数(Algebra)】
例えばグレード1では、2 + 2 = 4といった簡単な数式などから、「=」の両サイドが等しくなるといったことを学びます。

また、基礎的なコーディングを学び・書き始めます。さらに、クラスイベントの座席表作成などモデル化した実例を学びます。

一方、グレード8では、速度、距離、時間の関係を表すための代数での表記などを学びます。

また、最大数に関するデータを表すためのコードなどを作成します。その他、過去に調達した資金に基づき、将来的な資金調達者を予測するといった、現実的な状況をモデル化して学習します。

【データ(Data)】
例えばグレード1では、関心のある質問(例:「私のクラスメートはどんな動物が好きか」)に答えることで、データへの理解を深めます。

さらに、このデータをカテゴリーに分類し、結論を導くための根拠として提示します。

一方、グレード8では2つの変数間の関係を示す散布図など、より複雑な方法で表示されるデータを分析します。さらに、複雑な実験結果を比較することど、確率に対する理解を向上させます。

【空間的な感覚(Spatial sense)】
例えばグレード1では、様々な物体の長さや質量、容量を比較することで空間的な感覚を発達させます。また、カレンダーが時間を記すためにどのように構成されているかなども学びます。

一方、グレード8では交差線と平行線の角度の性質を応用し、角度を計算する方法を学びます。また、現代の技術で使われる「テラバイト」のような非常に大きな単位などについて学習します。

【金融リテラシー(Financial literacy)】
例えばグレード1では、カナダの硬貨や紙幣を認識し、それらの価値を比較することを学びます。

一方、グレード8では財務目標を達成するための計画を立て、バランスのとれた予算維持方法を学びます。

さらに、単純利子と複利の概念を調べ、利子が長期的な財務計画にどのように影響するかなどを学びます。

【社会的な感情の学習と数学のプロセス
(Social emotional learning skills and math processes)】

例えばグレード1では、ポジティブな動機付けについて学びます。「これは前にもやったから、またできる」といったセルフトークでの動機づけの方法や、仲間の励まし方を学びます。

一方、グレード8では健全な人間関係のスキルを身につけます。

仲間との共通点や、異なるグループの特徴を理解するため、情報をわかりやすくまとめた「インフォグラフィックデータ」を用い、コミュニケーションをとり、ストーリーを伝え、他者への認識を高めます。

カリキュラムのより詳しい内容については、以下の州政府公式サイトをご覧ください。
【オンタリオ州政府ニュースリリースページ】

数学を身近に感じられるカリキュラム


コーディングやデータ分析、金融に関する知識を子どものころから学ぶことは、将来の仕事にも直結しそうな内容です。

また、数学のカリキュラムにモチベーション維持の方法や人間関係に関わる項目があることも面白いですね。

さらに、実例などを用いて「財務目標を達成するための計画を立てる」といった具体的な授業を行うのは、大人視点でも非常に興味深い内容です。

日本では大学生または社会に出てから学ぶような内容を、オンタリオ州では今年の9月から小学生達が学び始めるようです。

彼らが社会に出た十数年後、どんな世の中になっているのか楽しみですね。

カリキュラムのより詳しい情報が知りたい方は、以下の州政府公式サイトをご覧ください。

【オンタリオ州政府ニュースリリースページ】

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