日本の伊勢志摩で5月26日(木)、27日(金)に開催されるG7サミット(先進7カ国首脳会議)出席のため、日本に滞在中のカナダの首相ジャスティン・トルドー(Justin Trudeau)氏。
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昨年の解散総選挙の際にも触れたジャスティン・トルドー首相ですが、今回の初来日を記念して、改めて経歴や注目された事などをご紹介します。
9年ぶりの政権交代で誕生した若き首相
CBC NEWS/ Photo Credit: Adrian Wyld / THE CANADIAN PRESS
昨年10月19日に行われた解散総選挙により、ジャスティン・トルドー首相が率いていた自由党(Liberals)が184席を獲得し、野党2位の地位から与党になるという歴史的勝利を成し遂げ、10年近くつづいた保守党のハーパー政権に終止符が打たれました。
これにより、43歳という歴代2番目の若さで第29代カナダ総理大臣にジャスティン・トルドー首相が就任することになりました。
サラブレッドだけど異例の経歴
オタワ出身のフランス家系のジャスティン・トルドー首相は、実は第20・22代ピエール・トルドー首相の長男。ピエール・トルドー首相は、「多文化主義宣言」を行い、公用語を英仏二カ国語とするなど、現在の多文化国家カナダの原型を作り上げた名首相として知られています。
photo from Huffingtonpost Canada
どのくらい大きくなったかをジャスティンさん(当時15歳)と話している前首相のピエールお父さん。
そういった人物の息子として育ったジャスティン・トルドー首相は、まさに政界のサラブレッドといったイメージですが、当初は政界に入る意志はまったくなかったようで、バンクーバーのUBC(ブリティッシュコロンビア大学)で教育学の学位を取得し、その後は数学の教師としてBC州で教鞭を取っていた他、スノーボードのコーチやバンジージャンプのインストラクターの資格を持って指導をしていたことも。また、学生時代にはバーテンダーやイカダ下りのガイドをしていたようです。
スノーボードのコーチをしていた頃の有名なインタビュー映像がこちら↓
世界が注目するイケメン度とイマドキ感
さて、そんな異色の経歴をもったジャスティン・トルドー首相は、188cmの長身に筋肉質なボディー、ディズニープリンスのような甘いマスクで、首相就任時以来、「イケメンすぎる首相」として各国のメディアが注目、世界的な男性向けファッションカルチャー誌GQでは「最もスタイリッシュな政治家」として2016年5月号の表紙を飾っています。
photo from GQ
ヨガ上級者も一目置く高い身体能力
また、スノーボードだけに留まらない大のスポーツ好きでボクシングも趣味のひとつ。自由党の党首になる1年前の2012年には、ガン撲滅のチャリティーマッチで優勝もしています。
本人のツイッターでは、こんな↓ヨガのポーズをしている写真が投稿され、「ヨガの上級者しかできない」と、その身体能力の高さが話題になりました。
photo from CBC NEWS
タトゥーを持った世界初の国のリーダー
そしてイギリスの国営放送のオンラインニュースでも話題にされたのが、ボクシングの構えをした下の写真。左腕には、カナダの先住民ハイダ族のアートを施したタトゥーが見られるため、タトゥーを持った世界初の国のリーダーとして注目されました。
photo from BBC NEWS
ちなみに、このアートは先住民が精霊のシンボルとしているRavan(渡りガラス)で、世界に光をもたらした創造主、文化的な英雄、何事をも可能にしてしまうずる賢さを兼ね備えた手品師といった意味を持っています。
ラブラブな奥様はファッションアイコン
また、ジャスティンさんが長くかけて口説き落としたといわれる奥様のソフィー・グレゴワールさんとは今年で結婚11年目でラブラブっぷりも健在。
元モデルでニュースキャスターでもあったソフィーさんは「美しすぎるファーストレディー」としも人気で、世界的ファッション誌Vogueでは、映画の美男美女のような写真が掲載され話題に。
photo from Vogue
3人のお子さんと家族で出かける時や、公式の場で身につけるファッションが多くのメディアで話題にされています。
カナダらしいカナダに!注目の政策は?
さて、ジャスティン・トルドー首相について、肝心の政治側面についてもご紹介しなくてはいけませんね!
財政赤字の解消、犯罪率の低下などの実績を築いた10年近く続いたハーパー政権でしたが、テロと戦うための空爆を支持し、地球温暖化対策や社会福祉への予算を大幅カットするなどの方針と、経済減退の影響で、徐々に国民離れが進みます。そこにカナダの国民性を表すような公約をかかげて登場したのがジャスティン・トルドー首相。お父さんの時代の復活を期待させるイメージも、カナダ国民の支持集めたのではないでしょうか。
男女同数、多民族な内閣
それを象徴したのが新内閣発足時。発表された内閣の構造は男性15人女性15人、カナダ史上初の男女同数内閣。「なぜ男女同数なのですか?」という記者からの質問に「……だって、2015年でしょ?」と返した答えが、「Because it’s 2015」というワードで世界中の話題になりました。
この内閣では、先住民の血をもつ法務大臣、国防相にはインド系の他、アフガニスタンから難民としてカナダに移住した閣僚などなど、多様な人種で構成されており、カナダを象徴した内閣として注目されました。また年齢も30〜50代と若く、経験不足を指摘される面もあります。
日本とも関わるTPPヘの姿勢
ハーパー政権では、締結に強い意欲を示していたTPP条約ですが、ジャスティン・トルドー首相は自由貿易推進派とはいえ、TPPについては「交渉が透明性を欠く」としてかなり慎重な姿勢をとっています。2月4日にニュージーランドのオークランド市で行われた署名式ではフリーランド国際貿易相が署名を行ったものの、正式なカナダとしての批准にはまだ多くの議論が必要との見解です。公約でも、影響を受ける産業に関しての調査や議会での議論を行うと表明しており、批准に至るまでは難航すると見られています。
署名をするフリーランド国際貿易相 / photo from CBC NEWS
シリア難民受け入れ
2月末までに2万5000人のシリア難民を受け入れることを公約としていたジャスティン・トルドー首相。移民局の手続きが間に合わないため受け入れ期限こそ伸びたものの、すでに多くのシリア難民の方々がカナダで新しい生活をスタートさせています。パリ同時多発テロ事件後、シリア難民にまぎれてテロリストが入国することを懸念して国民からの計画撤回の声があがっていましたが、一部の独身男性を受け入れ対象から除外することで計画を続行しています。
初めてのシリア難民を迎えるジャスティン・トルドー首相の映像がこちら↓
イスラム国空爆から撤退
公約のひとつだったのが、世界各地で多発テロを実行している過激派組織イスラム国に対する空爆からの撤退。ハーパー政権下の2014年からカナダは空爆に参加しており、6機の戦闘機を派遣していましたが、2月下旬に空爆を中止しました。「空爆は短期的な目標達成には効果的かもしれないが、地域の長期的な安定には寄与しない」とジャスティン・トルドー首相は述べています。なお、イスラム国との戦いを支援する特殊部隊は維持しています。
マリファナ合法化
photo from Cannabis Culture Magazine via Facebook
バンクーバーでマリファナを祝う北米最大のイベントが行われた4月20日、ジャスティン・トルドー政権のフィルポット保健相は、2017年春に嗜好品としてマリファナを合法化する意向を発表しました。これもジャスティン・トルドー首相が公約としていたひとつ。マリファナに関しては、日本を含め各国の対応は様々ですが、「若者を守り、公共の安全を高める最善の方法だと確信している」とフィルポット保健相は述べ、マリファナの禁止法則に効果がないという考えを示しています。アメリカでは20州以上が合法化をしてますが、国レベルの合法化はG7の先進7カ国の中で初となります。
photo from Justin Trudeau via Facebook
その他にも、ジャスティン・トルドー政権は公約として、中間層の所得税減税と富裕層の増税、インフラ投資を増やすため3年間の財政赤字を許容、石油パイプライン、キーストーン事業の環境への影響対応策の拡充などを掲げています。
さて、いろんな意味で世界が注目しているジャスティン・トルドー首相。お隣のアメリカでドナルド・トランプ氏が優勢のいま、トランプ氏と正反対のタイプのトルドー氏は、アメリカのアンチ・トランプ派の人々の間でも人気があがっているのだとか。
今回の来日で日本での人気も上昇中の様子!ジャスティン・トルドー首相の動向が気になる方は、ぜひソーシャルアカウントをフォローしてみることをオススメします。日本での滞在の現在、日本での様子もアップ中ですよ。
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