留学やワーホリの短期滞在も医療保険の加入を確実に

  

JSSの「トロント生活相談室」第1回
文/JSS(ジャパニーズ・ソーシャル・サービス)
カウンセラー・オンタリオ州公認心理療法士
公家孝典

旅行など短期間でカナダにおられる方、および留学・ワーキングホリデーなどである程度長期にわたってカナダで生活されている方、医療保険はいかがされていますか?

ある程度の期間、日本を離れるにあたり任意で民間の保険会社から海外旅行保険や医療保険に入っていらっしゃる方もいれば、健康に自信のある若者でそういった保険に一切加入していない方もおられるようです。

何年か前から、「ワーキングホリデーの利用者は任意の保険への加入が義務付けられた」という話も聞くのですが、ここ1、2か月の間でも、無保険でトロントに滞在している方からのコンタクトも受けているので、実情はその通りではないようです。

無保険だと高額の負担になるカナダ医療

カナダ滞在中に病気も怪我も無く過ごせれば何よりですが、万が一病気や怪我でカナダの医療機関において治療・入院が必要となった場合、その費用は私たちの想像をはるかに超えるほど高額なものになります。

例えば、OHIP(オンタリオ州の医療保険)を持たない状態でトロントに滞在中の方が、トロントの病院で入院すると4人部屋のベッド一床の使用料として一晩につき 3,000~3,500ドルかかります。円とカナダドルの為替レートはその時々で変化しますが、3日入院するとベッドの使用料だけで約100万円ほどかかることになります。

もちろん、入院が必要な病気/怪我ですから、さらに、レントゲンや MRIなどの検査費、医師の診察料、手術代、治療に用いられる様々な薬剤や機器の使用料などがすべて実費で加算されることになります。怪我や病気の種類にもよりますが、1週間の入院が必要なケースにおける医療費の合計が50,000ドルを優に超えることも少なくないでしょう。

より身近な例を挙げますと、OHIP(オンタリオ州の医療保険)無しで病院の救急室(ER-Emergency Room)で診察してもらう場合、救急の受付をした時点ですでに1,000ドル以上の医療費(救急室の受付料+医師の問診料)が発生します。レントゲンや血液検査、点滴、傷の縫合などしてもらう場合、さらに検査費、治療費が加算されますので、一回 ERで診察を受けたら(これも怪我や病気の種類や状態にもよるでしょうが)少なくとも 1500ドル位の医療費が請求されることを覚悟しなければなりません。

OHIPがなく、任意の医療保険に加入していなければ、この高額な医療費は自費での支払いになります。

高額な医療費の自己負担を避けようとするあまり、ひどい自覚症状があるにもかかわらず医療機関での受診を先延ばしにしたため、症状が著しく悪化し、結果的により高額な医療費がかかったり、生命に関わるほどの重症になってしまうケースもあります。

日本の国民保険でもまかないきれない

さて、日本の国民健康保険に関してはいかがでしょうか?留学やワーキングホリデーである程度の長期にわたり日本を離れるにあたり、住民票を抜き保険料支払いの保留・免除の手続きをしてきている若者も多いようですね。

あまり知られていないようですが、日本の国民健康保険には被保険者が海外で怪我や病気のために医療機関で治療を受けた場合、いったんは全額自己負担にはなりますが、日本に帰国後、これを申請することにより、“日本の診療機関にかかった場合の保険診療費を基準とした金額”の7割程度が払い戻してもらえるというシステムがあります。

しかしながら、これは日本で同等の診療を受けた場合にかかる医療費を基準としており、健康保険なしでの1泊の入院費がトロントでは3,000ドル以上かかったとしても、日本では健康保険なしでの1泊の入院費はだいたい5万円ほどなので、このシステムを使っての返金額は3万5000円ほどということになるようです。

トロントと日本の1泊の入院費用の比率がすべての診療に当てはまるかどうかは定かではないですが、「日本の国民健康保険に入っているから大丈夫」という過信は禁物です。

例えば日本人留学生がブルーマウンテンにスキーに行った際に大怪我をして、 2週間の入院プラス手術やその他の検査・治療で 1,000万円の医療費がかかるケースにおいては、この留学生が日本の国民健康保険の被保険者で日本帰国後に申請して返金があったとしても、かなり高額な自己負担になることは想像に難くありません。

民間の保険会社からの医療保険の保険料は決して安いものではないでしょう。しかしながら、カナダでの医療費(例 1:救急の受付時点で 約1000ドル、例 2:大部屋のベッド代が一泊3,000ドル以上)をいざ実費で支払わなければいけない事態になった場合を考えると、その保険料は決して高い買い物ではないということです。

オンタリオ州の医療保険に申し込んでみる

ワーキングホリデービザやポストグラデュエートビザで滞在中の方でも、一定の条件を満たしていればOHIPに加入できる場合があります。詳しくはLifeTorontoの記事でも紹介されているのでご参照ください。

LifeTorontoの記事:【ON州の医療保険 (OHIP)申請ガイド】適用範囲や申請方法を分かりやすく解説!

全く同じ条件で、同様の書類を持って行ったにもかかわらず、OHIPをもらえるケースもあればもらえないケースもあったりの「カナダあるある」な状況にぶち当たることもあります。

今までの私の経験だと必要条件が満たされている場合Service Canadaを2、3件回ってみる、または日を変えて別の職員に対応してもらうなどすれば、どこかしらのService Canadaで受理してもらえることが多かったので、ぜひ何度か試してみてください。

OHIPに加入出来ない場合でも、現地のカナダの企業が提供している短期滞在者向け(留学やワーホリ向け)の保険や、日本を出国後でも入れる海外旅行保険など数々あります。オンラインで加入できるところが多いので、万が一のためにぜひネットで探してみて加入しておきましょう。

皆さんのトロント滞在が健康で、楽しく、実り多いものになることを祈念して、私のLifeTorontoデビュー記事の結びの言葉させていただきます~

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