今年で8回目をむかえたトロント日本映画祭(TJFF)。
日本から監督や俳優、女優をスペシャルゲストとして迎えていますが、開催初日から3日目にあたる6月8日(土)に、映画『多十郎殉愛記』でヒロインのおとよを演じた女優の多部未華子さんが登場しました!
大盛況を見せた一夜のレポートと、多部未華子さんの特別インタビューをお届けします。
多部未華子さんが出演した映画『多十郎殉愛記』をTJFFにて紹介!
6月8日(土)、映画祭の会場であるトロント日系文化会館には、映画『多十郎殉愛記』のヒロインを演じた多部未華子さんをひと目見ようと、多くの観客で長蛇の列が出来ていました!
午後6時過ぎにレッドカーペットに現れた多部未華子さんは、集まったファンからの暖かい拍手で迎えられ、『多十郎殉愛記』のポスターにサイン。
映画の上映後には、再び多部未華子さんが観客の前に登場し、英語の通訳を通しながら挨拶をされました。観客からの質問に答える場面では、 素直な意見も述べられるなど、会場が笑いに包まれることも。
最後に観客らを背景に記念撮影し、大きな拍手を浴びながら会場を後にした多部未華子さん。終始とても和やかな雰囲気で幕を閉じました!
【多部未華子さんインタビュー】巨匠・中島貞夫監督との撮影やヒロインおとよについて
Q.巨匠の中島貞夫監督による20年ぶりの新作『多十郎殉愛記』にてヒロインのおとよを演じられました。中島監督の撮影現場はどのような雰囲気でしたか?
私が撮影に参加した日数は、全部で10日間くらいでした。それが、毎日本当に楽しかったんです。もちろん緊張もしましたが、いい思い出しか残っていません。とにかく中島貞夫監督が、本当に素晴らしい方でした。京都の太秦で撮影をしましたが、これまでずっと監督がスタッフやキャストの皆さんから愛されて続けてきて、監督も皆さんを愛してきたことが伝わってきました。
Q.大御所の監督だからこその、特別な雰囲気だったんですね。
監督にとって20年ぶりの撮影でしたが「監督についていきます!」というスタッフさんたちが集まったんだろうな、と思いました。それから、監督自身もスタッフ、キャストをとても信頼していることが伝わってきました。私たちに委ねてくれていることが伝わってきたので、その愛情を受けて、きちんと返したいという気持ちで毎日過ごしていました。『多十郎殉愛記』の撮影現場は、そんな空気感だったのです。本当に素晴らしい現場だなと、毎日思っていました。
Q.時代劇でヒロインを演じるにあたって、何か特別に準備をしたことはありますか?
特にはしていません。多十郎を演じた高良健吾さんは、1ヶ月ぐらい前から京都に住み込んで、チャンバラの練習をしたらしいのですが、私はそれを「へーぇ」と聞いていただけで、ほとんど何もしていません(笑)。
Q.撮影には10日間参加したとのことでしたが、スケジュールはタイトでしたか?
休みも結構ありました。去年の4月に撮影現場の京都に入っていたので、ちょうどお花見シーズンだったんです。休みの日は観光をしたりして、私自身はすごく楽しんでいました。
Q.多部さんが演じた、ヒロインのおとよさんについてです。彼女の性格に対して共感を持てる部分はありましたか?
共感する部分は、特にありませんでした(笑)。実は、おとよを演じる上で難しかった部分があります。監督が初めてお会いした時に「おとよは、とにかく母性愛なんだ」と。「多十郎に対しての母性、弟に対しての母性を大事に」とおっしゃっていました。それで「母性とは?」とずっと悩んでいましたね。監督は現場でもずっと「おとよは母性愛の人で、男はそこに甘えたり、頼ったりする生き物なんだ」と言っていて。ずっと言われ続けていたので、演じながら意識はしていました。とは言え、それがどのように出ているのか分からないですけれど、感情の面で意識だけはしていました。
Q.他にも、おとよさんを演じる上で難儀した点はありましたか?
母性愛を出すという点もそうですが、京言葉の方言も難しかったです。CDをいただいて、セリフをずっと聴いていました。
【多部未華子さんインタビュー】自分とはかけ離れた性格の役作り、トロントの印象について
Q.今までやったことがない役柄はありますか? 例えば、自分とはかけ離れた性格の役ですとか。
私の中で、今までの役は全部、自分とはかけ離れています。今回のおとよもそうなのですが、「気持ちが分かる」と共感できる役というのは、なかなか無いです。「なるほどね、こういう行動を取るんだ」とか、「こういう感情になるんだ」とは思いますが、「分かるなぁ」と思える役はほとんどありません。だから、理解をするようにしているだけで、共感しながら台本を読むということはゼロに近いです。
Q.そのように理解しながら役作りをしていくんでしょうか?
そうですね。よく自分が演じる役について、共通点や似ているところなどを質問されますが、私の場合は共通点を考えないんです。全く別の人物として、「こういう考えの人がいて、こういう人がいるんだなぁ」と。そう思いながら、セリフを覚えて現場に行きます。
Q.トロントには初めてお越しいただいたと思うのですが、どのような印象を持たれましたか?
実は2回目なんですよ。でも、前回はトランジットで一泊しただけでした。トロントの印象は、道が広いとな思いました(笑)。緑が多くて、のどかな印象ですね。大きなミュージアムがありますよね、美術館が好きなので気になっています。
Q.日本の時代劇を、カナダの人にどういう風に見てもらいたいですか?
今回、トロント日本映画祭で上映する作品の中では『多十郎殉愛記』のほかに、大森立嗣(たつし)監督の『日日是好日(にちにちこれこうじつ)』にも出演させていただいています。そちらは、茶道教室を描いている作品で、両方とも日本文化に関連しています。なので、逆にカナダの方が、日本の文化や古典をどう思うのか、どういう風に受け取るのかが気になりますね。
東京都出身の女優。2009年にNHK連続テレビ小説「つばさ」では、オーディションで1,593人の中から選ばれ、主演を務める。2011年にはドラマ「デカワンコ」で連続ドラマ初主演に。その他も「ドS刑事(2015)」「先に生まれただけの僕(2017)」などのテレビドラマ出演に加え、「HINOKIO(2005)」「君に届け(2010)」「ピース オブ ケイク(2015)」「日日是好日(2018)」などの映画にも多数出演している。日本映画界のレジェンド中島貞夫監督が20年ぶりに手がけた、2019年4月に公開されたばかりの長編劇映画「多十郎殉愛記」にて悲恋のヒロイン「おとよ」を演じた。
映画『多十郎殉愛記』予告編