先日10月にオンタリオ州で2人の女性が逮捕されたことで、今にわかに注目を浴びているカナダの法律があります。
それが、カナダ刑法365項。そこには、詐欺罪として罰せられる項目の1つにこう書かれています。
“fraudulently pretending to practice witchcraft.”
不正に、魔法を使うフリをすること。
…はい?……魔法?!
逮捕された2人の魔女
逮捕された2人女性は自称霊媒師。
一人は被害者の顧客から6万ドルを騙し取ったとして10月18日に逮捕、またその1週間後には、別の霊媒師の女性が、
「悪霊を取り払う」
という名目で被害者から5万ドルとその他の資産を騙し取ったとして逮捕されています。
彼女たちは、いわゆる霊視や占いなどにより被害者を騙したとして、
刑法365項の「魔法を使うふりをした」ことによる罪
として問われて、これがまるで中世ヨーロッパや北米で盛んに行われていた「魔女狩り」のようだと話題になりました。
ちなみにこの霊媒師の2人は別々の捜査により逮捕されていますが、同じ名字なため、何か関連性があるのか、たまたまの偶然なのかは現在警察が調査中とのこと。
これもこの事件の不思議さのひとつ。
ワシントン・ポスト紙やイギリスBBCも驚いたカナダの法律
カナダでこのニュースが出るやいなや、アメリカのワシントン・ポスト紙や、イギリスのBBCは、
「“不正に”とか、“ふり”と法律にあえて規定するという事は、カナダではまだ本当の魔法が存在するのか?!」
と、カナダ刑法365項を取り上げて注目。
実はこのカナダ刑法365項は、1892年に作成されて以来あまり適用例がないまま密かに存在する法律。
今年ジャスティン・トルドー首相が提出した法律の改正案にて、時代に合わない刑法の項目として削除の対象となっています。
ちなみに、他にも削除対象になっている法律には「決闘の申込み禁止」(カナダ刑法71項)など、いやいや、中世の騎士?というような項目も。
とはいえ、その削除前にたまたまこの刑法365項の「不正に、魔法を使うふり」の罰則が適用されたことで、各メディアは「17世紀マサチューセッツ州で行われた以来の魔女狩り」「カナダの最後の魔女狩り」と、面白がって取り上げていました。
それにしてもさすが、イギリス女王陛下を元首とするカナダ。ヨーロッパではないとはいえ、魔女も騎士もゲームや物語だけの世界じゃないところがなんだかすごいですよね。
カナダ刑法365項:section 365 of Canada’s criminal code
カナダ改正法案:Bill C-51
BBC:Canada’s last witch trials: Women accused of fake witchcraft
The Washington Post:In Canada, pretending to be a witch is a punishable offense