映画「blank13」齊藤工監督インタビュー@トロント日本映画祭2018

  

 
先日6月28日に閉幕したトロント日本映画祭2018にて、カナダ・プレミアとして上映された映画「blank13」

この上映に際し、監督である齊藤工さんがレッドカーペットに登場しました。
人気俳優でもある齊藤監督(作品中でも俳優名「斎藤工」で登場)のトロント日本映画祭の出席に、皆さん大興奮でお出迎え。
齊藤監督は日本から到着したばかりでしたが旅の疲れもみせず、写真を撮ったり、サインをしたり、握手をしたり、出迎えてくれた皆さんとたくさん交流されていました。

その時の模様がこちら↓

そして今回、このトロント国際映画祭にて舞台挨拶を終えた齊藤監督にインタビューをしてきました。
モデルから俳優、そしてお笑いや監督など、ジャンルにとらわれず、新たな挑戦を続ける齊藤工監督の映画への愛情、そしてカナダ映画への思いを知る事ができますよ!

齊藤工監督インタビュー

Q.「blank13」はカナダ以外でもすでに海外で公開されていますが、日本と海外とで反応の違いなどを感じていらっしゃいますか?

それはすごく予想し期待をしていた事でもあります。海外だと文化も違いますし。それが、思いのほかそんな事はなかったので、映画の持つ意味合いみたいなものを強く感じました。

僕自身も映画の元となるこの話を友人から聞いて、最初は他人事として聞いていたのですが、次第に自分の事のようになり、映画として形にすることになりました。なので、きっと観て下さった方も、遠い日本の物語だけど、自分や自分の家族と繋がる部分をどこかで意識して観てくださったんだと思います。

そういった観客の方々と世界中で出会えたので、映画に限らずエンターテイメントをグローバルに意識するという事は、自分の足元を深掘りする事だと学びました。


image from (C)2017「blank13」製作委員会

Q.カナダは北のハリウッドと呼ばれるくらい映画作りも盛んで、カナダ人自身も映画が大好きな国民性なのですが、映画ファンの一人として、カナダに対する印象はいかがでしょう?

僕自身、カナダ映画にだいぶ影響を受けています。デヴィッド・クローネンバーグとかポール・ハギスとか、ドゥニ・ヴィルヌーヴやグザヴィエ・ドランとか。あと、女優から監督になったサラ・ポーリーとか。

カナダは、移民の方も多く、混ざりあった文化背景のある国です。今まさに世界を席巻しているフィルムメイカーの多くは、そうした文化のカナダ人で、特にケベック州は、いま世界中が意識しているんじゃないかなと思います。

だからこそ僕らは、日本映画でしか作れない何かというものを、もっと作り続けないといけないし、こうした映画祭もそうですが、「カナダで公開!」と言われる日本映画がもっと増えるように日本の映画産業を盛り上げていきたいと思います。

デヴィッド・クローネンバーグ
1943年3月15日生まれ。トロント出身。映画監督・脚本家・俳優。75年に「デビッド・クローネンバーグのシーバース」で長編監督デビュー以後、「ラビッド」、「ザ・ブルード/怒りのメタファー」、「スキャナーズ」、「ヴィデオドローム」など異色ホラーを立て続けに送り出した。86年の「ザ・フライ」が世界的にヒットし一流監督の仲間入り。99年にはカンヌ映画祭審査委員長を務めた。(引用:allcinema・写真:Alan Langford)

ポール・ハギス
1953年3月10日生まれ。オンタリオ州ロンドン出身。映画監督・脚本家・プロデューサー。映画脚本としては初めての『ミリオンダラー・ベイビー』でアカデミー賞にノミネートされ、作品賞を受賞。翌年には自身が監督、脚本、製作した『クラッシュ』で作品賞と脚本賞を受賞した。脚本を手掛けた作品が2年連続でアカデミー作品賞を受賞するのは史上初。他にも007シリーズなど話題作の脚本も手掛けている。(引用・写真:wikipedia)

グザヴィエ・ドラン
1989年3月20日。ケベック州モントリオール出身。6歳の頃から子役として映画やTVドラマに出演。19歳で完成させた監督デビュー作「マイ・マザー」(2009)が、第62回カンヌ国際映画祭の監督週間に出品され、若者の視点賞、C.I.C.A.E.賞、監督週間のSACD賞を受賞。続く「胸騒ぎの恋人」(10)、「わたしはロランス」(12)もカンヌ国際映画祭のある視点部門に出品され、前者で再び若者の視点賞を受賞、後者では主演女優のスザヌ・クレマンに最優秀女優賞をもたらし、カナダの俊英として脚光を浴びる。前3作は自身のオリジナル脚本だったが、監督4作目「トム・アット・ザ・ファーム」(13)ではミシェル・マルク・ブシャールの同名戯曲を映画化し、第70回ベネチア国際映画祭のコンペティション部門で国際批評家連盟賞を受賞。続く「Mommy マミー」(14)は第67回カンヌ国際映画祭のコンペ部門で、ジャン=リュック・ゴダール監督の「さらば、愛の言葉よ」とともに審査員特別賞に輝いた。(引用・写真:映画.com)

サラ・ポーリー
1979年1月8日生まれ。トロント出身。子役として活躍し、1997年のアトム・エゴヤンの『スウィート ヒアアフター』で注目されるようになる。1999年から監督業にも進出しており、2006年の初長編映画『アウェイ・フロム・ハー君を想う』では、監督および脚本を担当し、カナダの脚本家組合が主催する脚本賞の映画部門最優秀脚本賞のほか、2007年度のロサンゼルス映画批評家協会賞のニュー・ジェネレーション賞、ニューヨーク映画批評家協会賞の新人監督賞を受賞した。また、第80回アカデミー賞脚色賞にもノミネート。(引用・写真:wikipedia)

Q.これから一緒に仕事をしてみたいカナダの映画人はいますか?

幸運な事に、去年グザヴィエ・ドランとドゥニ・ヴィルヌーヴにお会いする機会を頂けたんです。彼らの感性は、僕だけでなく、世界中の映画人に大きな影響を及ぼしていると思います。

彼らに会った時、ちょうど「blank13」の編集の仕上げの作業をしているところだったので、観て欲しいと送ったんです。そんな事もあって、彼らとは同じ職業で、同じ映画というものを作っているという意識を強く持って、憧れているだけじゃ駄目だと思いました。自分が影響を受けた映画を投影するのではなく、自分自身の感性みたいなものを作品に詰め込むべきだなと。なので、一緒に何かを作りたいというよりは、彼らを意識しているといった感じです。

たとえば「昼顔」という作品でイメージをもらった事で、じゃあ真逆は何だろうかとバラエティに向いたように、常に振り子のように逆を探す事で、自分が広がって行けばいいと思って僕自身が生きている所があるんです。だったら、作品自体もそいう要素を込めていこうと。

なので、今回の映画も、変におしゃれな映画ではなく、生々しいファミリードラマというだけでもなく、自分の成分になっているコメディの要素を正直になって込めていこうと思ったんです。それは、そうしたカナダのクリエイター達を意識しているからだと思います。

「昼顔〜平日午後3時の恋人たち〜」
2014年にフジテレビ系で放送され、不倫を題材にして社会現象的な話題と注目を集めた日本のテレビドラマ。俳優の斎藤工がブレイクするきっかけとなったといわれる作品。2017年には映画化。(写真:(C)2017 フジテレビジョン 東宝 FNS27社)

ドゥニ・ヴィルヌーヴ
1967年10月3日生まれ。ケベック州トロワリビエール出身。監督2作目の「渦」(01)でベルリン国際映画祭パノラマ部門の国際批評家連盟賞を受賞し、カナダのアカデミー賞にあたるジニー賞でも作品賞・監督賞を含む5部門を受賞する。その後長いブランクに突入したが、09年に長編3作目「静かなる叫び」でジニー賞9部門を制覇。アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた「灼熱の魂」(10)でカナダの俊英として国際的に注目を集める。13年には米国進出作「プリズナーズ」と「複製された男」の2本のスリラーを発表。麻薬戦争を題材にしたクライムアクション「ボーダーライン」(15)を経て、SFドラマ「メッセージ」(16)ではアカデミー作品賞・監督賞など8部門にノミネートされた。続いて、傑作SFノワール「ブレードランナー」の続編「ブレードランナー 2049」(17)でメガホンをとる。(引用・写真:映画.com)

Q.新しい事にチャレンジする齊藤監督の姿は、カナダなど海外に出てチャレンジする日本人、特に若い方にとっても刺激を与えてくれると思います。ぜひそうした方々にメッセージをお願いします。

僕が言わなくとも皆さん実感されていると思いますが、外に出ると自分がどういう国に生まれたのか、自分のアイデンティティが明確になってくると思うんです。今回の映画でも、海外を意識してから僕自身も思ったことです。日本だったら当たり前の事が海外では違う。それは武器にもなるし特徴でもある。

海外に行ってその地に染まるという事も大事ですが、日本というものを自分自身にちゃんとコネクトさせて、その足でその地に堂々と立って存在して欲しいと思います。そして、自分自身もそうでありたいと思っています。

監督:齊藤 工(俳優:斎藤 工)
1981年8月22日生まれ、東京都出身。 数多くの映画、テレビドラマに出演し、15年『エランドール賞』新人賞を受賞。主な出演ドラマに、「最上の命医」(11,16,17/TX)、「臨床犯罪学者 火村英生の推理」(16/NTV)、「BG~身辺警護人~」(18/EX)、「MASKMEN」(18/TX)など。16年公開の『団地』(阪本順治監督)で第31回高崎映画祭の最優秀助演男優賞、17年公開の『昼顔』(西谷弘監督)では第20回上海国際映画祭~日本映画週間~ゴールドクレイン賞最優秀男優賞を受賞。本作では俳優としてウラジオストク国際映画祭の長編コンペティション部門で最優秀男優賞を受賞した。
監督としてショートムービー『サクライロ』で2012年にデビュー。14年、『半分ノ世界』(主演:井浦新)が15年の国際エミー賞デジタル部門ノミネート、セルビア日本交換映画祭アイデンティティ賞を受賞。以降『バランサー』(14)や大橋トリオMV(主演:村上淳)、ファッションドキュメンタリー『Embellir』等を監督、アニメーション企画など多種多様な映像製作に携わる。監督七作目にして初の長編となった本作は、上海国際映画祭をはじめとする国内外の映画祭で六冠を獲得するなど高い評価を受けている。昨年は権利フリーのクレイアニメ『映画の妖精 フィルとムー』で原案・企画・制作・声の出演・キャラクター命名をつとめた。次回監督作はHBOアジア制作の6ヶ国オムニバスホラードラマ『Folklore』で、日本代表の監督として選出されれるなど、他にも多数の映像作品の制作を準備している。
(映画「blank13」公式サイト)

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