毎年6月、カナダ・トロントでは北米最大級のプライド・パレードが行われます。
しかし今年は、コロナウイルスの影響により、第40回目となるプライド・パレードがオンラインで行われることとなりました。
トロントのプライド・パレードの長い歴史のなかでも史上初となる試み。
いったいどんなパレードとなるのでしょうか。
今回はご自宅からの楽しみ方や、プライド・パレードに関する基礎知識をご紹介します。
目次
LGBTQ2+の祭典!トロントのプライドパレード(Pride Parade)が6月にオンライン開催
2020年6月のトロントのプライド・パレードは、コロナウイルスの影響によりオンラインで行われることとなりました。
また、6月中はプライド・マンス(Pride Month)でもあり、プライド・パレード主催団体の「Pride Toronto」の公式サイトでは6月1日よりLGBTQ2+にまつわる日替わりのコンテンツが提供されています。
こちらのサイトにはパレードも含む全日程が公開されているのでご紹介していきます!
大きな見どころは6月26~28日の3日間
photo from Pride Toronto
主催団体の公式サイト内のカレンダーを見てみると、6月26~28日の3日間には以下のイベントが予定されています。
カレンダー上の各イベントをクリックすると配信画面へ移動し、配信予定時間以降に動画コンテンツを見られます。
※一部ZOOMやTwitchを利用したコンテンツもあるので、ご覧になる前に各ソフトをインストールしておくと便利です。
●27日(土)「ダイク・ラリー/マーチ(Dyke Rally [March])」
●28日(日)「オンライン・プライド・パレード(Online Pride Parade)」
聞き馴染みのない言葉もあると思いますので、それぞれどういったイベントなのかこれまでの様子も併せて見ていきましょう!
※表示時間はすべてトロントの現地時間です。日本との時差は約13時間で、日本のほうが約半日先にカレンダーが進みます。そのため、日本では表示日時の翌日深夜となります。
「トランス・プライド(Trans Pride)」
26日(金)1:00 PM – 3:00 PM
photo from Pride Toronto公式FB
トランス・プライドとは、トランスジェンダーの方々を中心としたパレードで、レインボー・フラッグではなく、トランスジェンダーの象徴であるライトブルーとピンク、ホワイトで構成される旗のもとトロントの街中を行進します。
これはトランスジェンダーを中心とした行進としては、世界最大規模といわれています。
今年はオンラインのため実際の行進は行われない見込みですが、公式サイトによると以下のような内容になる予定とのことです。
実際にどういった演説やパフォーマンスがあるのかはわかりませんが、トランス・プライドは通常メッセージ性の強いイベントです。
当事者やお友達、ご家族の皆さんとご覧になるのもいいかもしれませんね。
「ダイク・ラリー/マーチ(Dyke Rally [March])」
27日(土)11:00 AM – 12:30 PM
ダイク・ラリー/マーチは、レズビアンやバイセクシュアルの女性を中心とするパレードです。
通常「ダイク・マーチ」と呼ばれることが多く、皆さん大型のバイクや車、自転車などに乗ってトロントの街中を颯爽と走り抜け、その後ろを大勢の参加者が徒歩で行進します。
今年はオンラインのため実際の行進は行われない見込みで、現段階では詳細な内容は発表されていません。
ただし、公式サイトにはZoom Code: 959 6539 9273が掲載されているので、このコードを使用しZOOM上で演説やパフォーマンスなどが見られるのかもしれません。
今後の発表に注目ですね!!
レズビアン(女性の同性愛者)とほぼ同じ意味合いで使われる言葉です。主に欧米では男っぽい見かけのレズビアンの方に対して使われていますが、蔑称としての意味合いも含まれるため、当事者同士や理解のあるコミュニティー外ではあまり使わないほうがいいかもしれません。
「オンライン・プライド・パレード(Online Pride Parade)」
28日(日)2:00 PM – 4:30 PM
トロントのプライド・パレードは北米最大級といわれています。
ご存知レインボー・フラッグのもと、当事者やその家族や友人・同僚のほか、観光客まで、人種・国籍に関係なく数え切れないほどの人々が集い、街中を闊歩し、沿道から声援を送り合います。
通常はトロントのゲイタウンである、チャーチ・ストリート沿いから行進が始まり、パレードにはジャスティントルドー首相やオンタリオ州知事、トロント市長などが参加することもあります。
国や地方自治体も活動を後押ししているということですね!
今年はオンラインとなり、どのようなイベントになるのか詳細はまだ明らかにされていません。
また、現時点では首相参加の有無など不明点も多いのですが、世界的にも注目度の非常に高いイベントであるため、トロント初のオンライン・パレードに関心が集まっています。
6月中は毎日コンテンツを配信中
パレード主催団体の公式サイトでは、プライド・マンスの6月中は毎日日替わりで何かしらのコンテンツがオンライン配信されています。
団体によれば、「オンラインで提供する様々なコンテンツの多くはパーティー的なものでなく、コミュニティーへの参加や家庭で楽しめるエンターテインメントコンテンツである」と述べています。
以下の動画「クィア・ショッピング・チャンネル(Queer Shopping Channel)」など、思わず笑ってしまうようなコンテンツから、人権問題についての真剣なディスカッションまで幅広いコンテツが用意されています。
※上記の動画が上下に分割表示されてします場合は、動画上の動画名をクリックし公式FBサイトへ移動してください。
これらのコンテンツは以下のような内容で、日によっては詳細が異なります。
●火曜日:ブラック・クィア(性的少数派の黒人)に焦点をあてた教育系コンテンツ など
●水曜日:アーティストによるワークショップや、少しアダルトな商品などを販売する「Queer Shopping Channel」 など
●木曜日:セックス&リレーションシップセラピストのキャット・コバによる悩み相談 など
●金曜日:人気ドラァグ・クイーン「Fay & Fluffy」によるファミリー・プライドや、アメリカ手話(ASL)教室 など
●土曜日:「Stay At Home Saturdays」と呼ばれる終日のストリーミング・マラソン番組 など
●日曜日:地元アーティストによるパフォーマンスなど
※コンテンツの詳細は主催団体のサイト内カレンダーにてご確認ください。
自宅で過ごす時間が増え、「Netflixの映画も見尽くした!」という方も多いと思います。
ぜひご自宅から、トロントのプライド・マンスを体験してみては?
トロントのプライド・パレード基礎知識
プライド・パレードとは、プライド・マーチやプライド・フェスティバルなどとも呼ばれるイベントで、日本でも数十万人が参加する東京レインボープライド(略称TRP)などが開催され、その認知度は高まっています
イベントの主な目的は、レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー(LGBT)をはじめとした、セクシャル・マイノリティーの存在を社会に伝えること。そして、その独自のカルチャーを祝い・讃えることです。
また、同性婚などの法的権利の主張や反差別などを求める社会運動の場としても機能しています。
トロントでのプライド・パレードの歴史を遡ると、1970年代から起きた数百人規模のデモがその原型ともいえます。
その後、1980年代初頭に起きた警察によるゲイ浴場の襲撃により、多くの逮捕者や実名報道による被害者が出たため、セクシャル・マイノリティーとして暮らす人々が集まり、政治的なプロテストを開始したのが現在のプライド・パレードの始まりと言われています。
そして、2020年で40回目のプライド・パレードとなる予定でしたが、コロナウイルスの影響でオンライン化されました。
※今年は実際のパレードが行われないため、次回が第40回目とカウントされる可能性があります。
なお、2003年にはトロントのあるオンタリオ州と、バンクーバーのあるブリティッシュコロンビア州で同性婚が合法化、2005年にはカナダ全土で同性婚が合法化されました。
そのため、現在では日本人のセクシャル・マイノリティーの方がカナダで同性婚をしているケースも少なくありません。
こちらのサイトではこのあたりの詳細な時系列が確認できます。ぜひ御覧ください。
ある事件をきっかけに6月がプライド月間に
photo from NYC LGBT Historic Sites Project
トロントでは6月を「プライド・マンス(Pride Month)」とし、LGBTQ2+に関わる人権について考え・社会に訴える月となっています。
また実は、トロントだけでなく北米では6月をプライド・マンスとする地域が多いのですが、これには「ストーン・ウォールの反乱」という事件が大きく関わっています。
ストーン・ウォールの反乱とは、1969年6月末にアメリカ・ニューヨークで発生した事件で、ニューヨークのグリニッジビレッジにある「ストーンウォール・イン(Stonewall inn)」というゲイバーにニューヨーク市警が踏み込み捜査を行い、従業員や異性の服装を着ていた人々を逮捕しました。
今ではゲイバーやゲイクラブはストレート(異性愛者)の人々も楽しめる社交の場となりつつありますが、当時はゲイバーというだけの理由で捜査の対象でした。
この様子を見ていたセクシャル・マイノリティーの人々は、この日はじめて警察に立ち向かい、数日間続く暴動へと発展し多くの負傷者が出ました。
そのため、この事件が起きた6月は北米を中心にプライド月間とされ、性的少数派の人々の人権について考え・訴える月となりました。
自宅から叫ぶ今年の「HAPPY PRIDE」
以下の写真は私が昨年(2019年)のトロントのプライド・パレードに参加した際に撮影したものです。
参加して本当に良かったなと思えるような多くの発見と驚きがありました。
例えば、カナダのジャスティン・トルドー首相は沿道にいる私と握手してくれました。
例えば、同性婚をしたゲイカップルと、おしゃれに着飾った10歳くらいの少女が家族として手をつないで街中を行進していました。
また、巨大なトラックでカナダの有名企業や銀行の社員達がLGBTQ2+にフレンドリーなプロモーション活動を行っていました。
さらに、消防・警察、公共交通機関の職員も、警備ではなく参加者としてパレードに存在していました。
そこには悲しい顔をしている人は一人もいませんでした。
みんな大きな声で「HAPPY PRIDE!!」と叫んでいました。
それでも、同性婚が合法化されたカナダですら差別意識は残っていると思います。
だからこそ、こうしたパレードを通じ、それぞれの違いを尊重し、楽しい時間を一緒に共有する必要があるのだと感じました。
今年のプライド・パレードはオンラインなので、世界中から参加できます。
これまで物理的に参加が難しかった方も、ぜひご自宅から参加されてみては?