カナダで働くときに知っておきたいのがカナダの雇用(失業)保険「EI(Employment Insurance)」。
この保険は永住者や特定の就労ビザを持っている人だけでなく、学生やワーキングホリデイを利用して働く人も対象になります。
いざというときのために、しっかり知識を身に付けておきましょう。
LifeTorontoの以下の記事でも、概要を日本語でまとめていますでご参考ください。
・【日本語訳】カナダ緊急対応給付金(Canada Emergency Response Benefit)の申請条件と方法まとめ
・【CERBに関する疑問を解決】政府のカナダ緊急対応給付金Q&Aページ・全日本語訳
・【約3分で完了】カナダ緊急対応給付金(CERB)の申請方法の流れを日本語で解説
また、コロナウィルスに関わる特例影響下での本件に関するお問合せは受けかねます。
EI (Employment Insurance)とは
EIとは、日本の雇用保険の失業手当にあたるものです。
カナダで働く労働者は基本的にはEIに加入しており、レイオフ(解雇)された場合に一定の条件を満たすと収入補償として支給金が支払われます。
従業員は収入の1.58%(2020年)を保険料として支払いますが、一般的には給料から自動で天引きされています。
従業員の負担割合は毎年変化するので、こちらの公式サイト(EI premium rates)から確認してください。また、ケベック州については、独自のレートになるので注意してください。
なお、雇用主は労働者の1.4倍の保険料を支払いますが、中には雇用主が保険料を支払っていないケースもあるので、給料の受け取り時などにしっかりと保険料の支払いについて会社側に確認しておきましょう。
雇用主が保険料を支払っていない場合、EIの対象外となる可能性があります。
EI(Employment Insurance)の受給資格は大きく2つ
失業後にEIを受け取るには以下の大きく2つの受給資格を満たしている必要があります。
●”必要労働時間”を満たすこと
●失業理由が”解雇”であること
また、失業後に「求職活動」をおこなっていることや、すぐに働ける準備をしているといった「労働意欲」があることも、厳密には受給資格に明記されています。
必要労働時間について
EIを受給するためには、仕事の最終日から52週(=1年間)、もしくは最後に失業手当てを受けた時までさかのぼり、420時間から700時間以上の勤務が必要です。
例えば、以前にEIを受けたことがない人で仕事の最終日が3月31日なら、昨年の3月31日からの合計労働時間を計算します。
この労働時間数は各州の失業率に左右されます。こちらの政府公式サイトでは郵便番号からお住まいの地域の必要時間数や失業率を調べられるのでご利用ください。
なお、以下は2020年3月現在での政府発表の失業率と必要労働時間数の抜粋です。
バンクーバー(BC州)必要労働時間:700時間(失業率:4.5%)
モントリオール(QC州)必要労働時間:700時間(失業率:5.5%)
上記はすべて同じ時間数ですが、失業率が高い地域ほど必要労働時間数は少なくなります。
また、各州毎の失業率と必要労働時間数は毎年更新されるので、必ずご自身でご確認ください。
※EIの受給には、過去52週間(=1年間)で少なくとも”7日間連続”して仕事も賃金もない期間が必要であることが、厳密には資格要件として明記されているので注意してください。
失業理由が解雇であること
EIを受給するには、労働者に責任がない形で解雇され失業していることが条件です。
そのため、自ら退職を宣言したり、労働者が起こした問題や違法行為などが理由で解雇された場合はEIの対象となりません。
さらに、刑務所、またはその他の同様の機関に拘束されている間は、EIを受け取る権利はありません。
産休・育休や自営業者もEIの対象となる
EI は通常の解雇による失業のほか、「産休・育休」での失業も支給対象となります。
無給で産前休暇や育児休暇を取得する場合も条件を満たすとEIを受給できます。また、この場合の必要労働時間は600時間以上となり、解雇による失業とは異なる時間数で申請できます。
産休・育休での失業についての詳細はこちらの政府公式サイトからご確認ください。
さらに、自営業者も雇用保険に登録することでEI(EI special benefits for self-employed people)の申請は可能です。詳細はこちらの政府公式サイトをごらんください。
EI(Employment Insurance)の受給金額
EIの受給金額は申請者によって異なりますが、基本的な目安として就労時の週平均収入の55%とされています。
仮に1週間に平均$600稼いでいた場合、週$330程度の支給が見込まれます。
ただし、収入額に関係なく受給できる最高支給額は以下の金額となっています(2020年 1月1日現在)。
●各週:$573
●年間:$54,200
なお、受給額からは税金が差し引かれるので、手取り額は上記より少なくなるので注意してください。
また、受給額は更新されますので詳細は政府公式サイトをご参照下さい。
EI(Employment Insurance)の受給期間
EIの受給期間は最低14週間から最大45週間とされ、申請時の州の失業率と労働した時間で決まります。
受給期間は失業率や労働時間により様々です。計算はこちらの政府公式サイトをご参照ください。
以下は、2020年3月現在での政府発表の失業と過去の労働時間数から計算した受給期間の例です。
地域はトロント・バンクーバー・モントリオールを想定していますが、いずれの地域も失業率が6.0%以下で必要労働時間が700時間のため、受給可能期間は同じ週数となっています。
●週30時間✕12週間(約3カ月)働いていた場合
合計360時間 → 「支給なし」(必要労働時間数を満たさないため)
●週40時間✕24週間(約6カ月)働いていた場合
合計960時間 → 「17週間」受給可能
●週40時間✕40週間(約10カ月)働いていた場合
合計1600時間 → 「29週間」受給可能
トロント(ON州)必要労働時間:700時間(失業率:5.4%)
バンクーバー(BC州)必要労働時間:700時間(失業率:4.5%)
モントリオール(QC州)必要労働時間:700時間(失業率:5.5%)
2020年3月現在
Ei(Employment Insurance)の申請方法と必要書類
EIはオンラインまたはService Canadaの窓口から申請できます。
申請にはいくつかの必要な書類や情報があります。また、EIは申請から支給まで最低2週間の待機期間があるため、申請される場合は速やかに準備しましょう。
申請に必要な書類と情報
まずは、EIの申請に必要な以下の書類と情報を集めましょう。
●ROE(Record of Employment=離職証明書)
※この書類は一般的に”雇用主”が電子書類にて政府へ提出するため、申請者が準備する必要はありません。ただし、離職日の登録が必要なため、日付は雇用主に確認して書類の内容と合わせましょう。
また、雇用主から紙の書類を手渡された場合、過去52週間に発行されたすべてのROEを請求し、EI申請の後できるだけ早くこの書類をService Canadaに提出する必要があります。紙のROEの提出は郵送または、Serice Canada窓口にて直接行えます。
※雇用主によるROE提出先「オンライン提出の場合」:こちらの政府公式サイトより
「郵送の場合」
Service Canada Center
W-T Region P.o. box 245 Edmonton AB T5J 2J1
【必要情報】
●自分の住所と郵便番号(=Postal Code)
※通常の居住地がない場合、最寄りの窓口で直接申請する必要があります。
●銀行口座の情報
※銀行で「Portfolio」が欲しいと伝えると入手できます。パスポートなど本人確認書類が必要な場合もあるので準備しておきましょう。主に、支店/トランジット番号、金融機関名と番号、口座番号が必要です。この口座に支給金が振り込まれます。
●過去52週(=1年)で働いた”すべての”雇用主の名前と住所、電話番号、始業日、離職日
※離職日は雇用主が提出する書類「ROE」と日付を合わせましょう。
●過去52週間(=1年間)で、保険料の支払いが最も多かった週の収入
※常に雇用保険料が天引きされていたのであれば、単純に最も収入の多かった週が対象です。
●母親の旧姓
※登録時に必要です。
●SINナンバー(Social Insurance Number=社会保険番号)
※9桁の番号で、写真のように9から始まる場合はVISA・Work permitも用意しましょう。また、SINナンバー登録時と住所が異なる場合は、先に住所変更をおこないましょう。SINナンバーについはコチラをご参照ください。
※年金情報について
年金を受け取っている・受け取る予定の方は、年金の種類(CPP / QPP、保険や雇用主からの退職年金の有無等)と開始日、金額などの情報が必要です。この情報を持っていない場合、1-800-206-7218に電話し正確な情報を提供する必要があります。
EIの申請方法・徹底解説
申請書類や情報が揃ったら、以下のどちらかの方法でEIの申請を行いましょう。
●Service Canadaの窓口で申請
どちらの申請方法でも基本的に必要な書類や情報は同じです。
英語が苦手な場合は、公式HPをWEBサイト翻訳サービスなどで調べながら手続きするほうがわかりやすいかもしれません。
一方で、制度の詳しい説明を聞きながら手続きしたい場合は窓口へ行くといいでしょう。午前中など窓口が空いている時間帯がおすすめです。
ここからは、実際のWEBサイトの画面を踏まえながら説明します(一部入力が容易な画面は割愛)。
情報が揃っていれば30分~1時間程度で入力できます。少し手順は長いですが頑張りましょう!
1:申し込み画面下部の「start application」をクリックし次の画面へ
※上部は個人情報などの免責事項などが書かれています。
2:初めての申請ならNO、前回登録した情報があればYESを選びContinueをクリックし次の画面へ
※前回、必要情報の入力などでタイムオーバーとなった場合はYesを選ぶことで、氏名・SINナンバー・母親の旧姓等を入力し途中が改めて入力できます。
3:(画面割愛)従業員はBenefit for employees、自営業者はSelf-employedを選びContinueをクリックし次の画面へ
4:特定のプログラム参加していない場合NOを選びContinueをクリックし次の画面へ
※この項目は Work-sharing programなどユニオン等が行う独自プログラムの対象者・または自動差産業の従事者であるかという質問です。該当しそうな場合コードが必要になるため、雇用主や会社の担当部署などへ確認しましょう。
5:解雇による失業の場合、以下の画面でRegular benefitsを選びContinueをクリックし次の画面へ
※育休や病休の場合はそれぞれ該当する項目を選択しましょう。
6:(画面割愛)Regular Benefitsの申請に必要書類や情報について書かれた画面が表示。内容一読後Continueをクリックし次の画面へ
7:以下の画面でSINナンバーなど準備した情報を入力しContinueをクリックすると入力内容確認画面へ。さらにContinueをクリックし次の画面へ
※Mother’s maiden nameとは母親の旧姓のことです。各情報はSINナンバー書面の表記に従いましょう。
8:表示されたテンポラリーパスワードを控えたらContinueをクリックし次の画面へ
※ここから申請の入力が一時中断された場合は、このパスワードを使用することで途中から再度入力可能です。
9:(画面割愛)言語の選択・メールアドレスや電話番号、住所等の入力後Continueをクリックし次の画面へ
10:「Programs and services」では該当ステータスを選択しContinueをクリックし次の画面へ
※この項目は任意のため、該当個所がなければ次へすすみましょう。
11:EI申請に必要な書類(T4E)の提出方法と配偶者についてを選択しContinueをクリックし次の画面へ
※オンラインでの提出が便利です。また、配偶者をあなたの所得税申告書に扶養家族として申告する場合は、basic and spouseを選択しましょう。
12:(画面割愛)振り込み口座について選択しContinueをクリックし次の画面へ
※初めて登録の場合は一番上の項目でNOを選択した後、口座情報が揃っているのであれば「I have my banking information with me.」を選択します。
13:銀行口座情報を画面に従い入力しContinueをクリックし次の画面へ
14:最終学歴と組合加入の有無・ビザの種類や有効期限などを入力しContinueをクリックし次の画面へ
15:(画面割愛)就労履歴についての確認事項を一読しContinueをクリックし次の画面へ
16:雇用主の氏名(ビジネスネーム)や電話番号のほか、始業日と離職日、復職の有無を入力しContinueをクリックし次の画面へ
※離職日は、雇用主が提出するROE(離職証明書)に記載するため日付を合わせてください。
17:離職理由を選択しContinueをクリックし次の画面へ
18:(画面割愛)賃金(時給または年俸)を入力しContinueをクリックし次の画面へ
19:該当する役職(dishwasherなど担当した仕事名)を入力・NOCコード(職業別コード)検索しContinueをクリックし次の画面へ
20:(画面割愛)ROE(離職証明書)の提出方法や提出できない理由を選択しContinueをクリックし次の画面へ
※通常は雇用主からROEを紙で手渡された書類を労働者本人が提出、または雇用主が電子書類で提出するため一番上の「I have a Paper of Record of Employment~」を選択します。
なお、まだROEが手元にない場合や雇用主の提出を依頼中であれば「I requested or will request the Record of Employment~」を選択
21:(画面割愛)過去52週(=1年間)で他に離職したものがあれば入力しContinueをクリック
!!ここまでくればもうあと一歩です!!
22:(一部画面割愛)ここから数ページ、ケベック保護者保険プラン(QPIP)や労働者災害補償金、年金などのについて該当の有無を選択しContinueをクリックし次の画面へ
※いくつかの画面が表示されますが、該当の有無をYes・Noで返答しすすめます。
23:過去52週(=1年間)の中での収入について入力しContinueをクリックし次の画面へ
※まず1年間で22週未満の労働であったか聞かれます。22週以上ならNOを選択後、過去52週間の週の平均総収入(控除前)が$1,042ドル以上だったか?などの質問に答えます。
平均収入が$1,042以下であっても、週の最高収入の情報提出することで支給額を増やすことも可能です。「Would you like to now provide the details for each week of your highest earnings?」を選んだ場合、1年間で収益が高かった週の日付と金額を入力します(最大合計22週まで登録可能)。
24:働いていた時期などの詳細を入力しContinueをクリックし次の画面へ
※ここからいくつか画面表示されるので指示に従い入力してきます(一部画面割愛)。
終盤でThird Party Assistanceについて問われますが、申請をサポートした第三者がいればその人のサインが必要になります。
25:(画面割愛)同意画面6ページを一読・Continueをクリックしし次の画面へ、申請完了確認画面で終了!
※同意画面が6ページ続き、最後に確認画面が表示されます。このとき、Confirmation Numberが発行されるので念の為控えておきます。
EI申請時の最重要ポイント
申請完了後4~10営業日以内にService Canadaから郵便で4桁のデジタルコード「EI Access code」が送られてきます。ただし、コードの発行=支給決定ではありません。(申請の後に審査が始まり、支給の可否が決定されます。)
このコードによりオンラインの申請書にアクセスでき、EI Access codeで申請状況の確認や銀行口座変更などができます。EI Access codeは申請時に登録した住所へ郵送されるため、申請後の引っ越しなどに注意してください。
なお、EI Access codeが期限内に届かない、または以前雇用保険給付を受けていてアクセスコードを忘れた場合は、1800-206-7218に電話し(8:30 AM~4:30 PM、祝日を除く月~金曜日営業)連絡しましょう。
申請後のレポートについて
EIの受給には2週間に1度レポートでの現状の報告が義務付けられています。
こちらのオンラインレポートや、電話(1-800 531-7555)での報告が一般的です。
その他、書面による報告についてはこちらの政府公式サイトをご確認ください。
EI利用時の注意点
以下はEI申請時の注意点です。
・失業後は速やかに申請(長期間経つと受給資格を失う可能性あり)
・EI申請から受給が始まるまで2週間の待機期間あり
・申請してから28日以内に最初のEI が支払われる
・受給期間に受け取った給与やコミッションは報告の義務があり
・受給期間中は2週間に1度オンライン(又は電話)現状報告のためレポートの提出が必要です
EI申請は待機期間なども考慮し、なるべく早めに申請しましょう!