【トロント・ビジネスパーソン:第1回 】電通ボス 久保恵一さん「カナダは『こんな世界だったらいいな』を示している国の一つだと思う。」

   
  


トロントのビジネス界でご活躍されている皆さんへのインタビュー連載「トロントの気になるあのビジネスパーソン!」。
記念すべき第1回となる今回は、電通ボス(DentsuBos)さんのオフィスへお伺いし、同社でVice Presidentを勤めていらっしゃる久保恵一さんにインタビューをさせて頂きました。

カナダでの生活が気に入り、駐在期間終了後もご家族でカナダに残ることを決意された久保さん。現在のお仕事のこと、移住を決意された経緯、カナダの教育環境、お気に入りのレストランについても伺ってきました。

駐在員としてカナダへ。家族でトロントへの移住を決意した理由とは?

– 現在勤務されている電通ボスさんの業務内容を、簡単に教えてください。

電通ボスの行なっている業務を広告業界では「フルサービス・エージェンシー」と呼んでいます。広告の企画立案や制作はもちろんのこと、メディアプランニングにバイイング、調査やPR、セールスプロモーション、イベントやソーシャルメディアに特化したマーケティング活動など、広告コミュニケーションに関わるほぼ全ての業務を行なっています。

同社が手がけるコマーシャル広告。Morinaga Nutritional Foods “Alove”ヨーグルト(広告商品はアメリカで販売中)

現在、電通ボスがお取引させて頂いているクライアント数の割合としては、日系クライアントが全体の1〜2割程度。残りは非日系のクライアントとなります。トロントとモントリオール、そしてニューヨークにオフィスがあり、200人以上の社員が働いていますが、日本人は私1人だけです。

− 久保さんは駐在期間終了後、カナダにそのまま残ることを決意されました。その経緯について教えてください。

カナダへは2012年の7月に、駐在員として家族と一緒に引っ越してきました。目的は電通が買収した、モントリオールでトップクラスの広告会社であったボス社を電通カナダに統合し、統合後の企業運営を円滑に、かつ効果を最大限にするというのが私の任務でした。

約2年が経過して、日本への帰任命令が出たのですが、子育て環境やワーク&ライフバランスの点でカナダに魅了され、カナダでそのまま生活を続けるために電通を退職し、再度ローカル社員として電通ボスに入社し直しました。

「短期間でも入社した人はファミリー」電通ボス受付の壁には歴代社員、全員の名前が入社順に。

− 仕事をされていて、日本とカナダの両国でどのような違いを感じられますか?

仕事の進め方や意思決定方法、働き方など、多くの点で違いがあると思います。例えば、私がカナダに来てすぐの頃、子供が病気になってしまい、病院に連れて行くので出社が遅れる旨を会社に電話したところ、「そんなことで電話しなくても大丈夫。一番すべきことをやれば良いんだよ」と言われたんです。どんな状況であっても、「ルールを守る」ということが比較的に重要視される日本社会との違いに驚きました。
 
そういう「個人を尊重する文化」というか、やるべき仕事のパフォーマンスさえしっかりと出していれば、ある程度は個人の裁量で仕事ができるという点は、大きな違いであり魅力に感じましたね。

オフィスにはキッチンが完備。毎週金曜日の夕方には、お酒を飲みながら若手社員によるプレゼン大会が行われる。

 

ベートーベンとモーツァルト、どっちが不幸!?「考えさせる」カナダの教育方法

−お子さんの子育て環境については、多くの駐在勤務の方々が持つ不安の一つだとよく聞きます。久保さんが魅力に感じられたというカナダの教育面についても教えてください。

子供が小学校3年生の時に受けた音楽の授業が非常に印象的でした。「ベートーベンとモーツァルト、どちらがより不幸な人生だったかを話し合おう」というものです。日本の学校では、まず音楽の授業でこんなことやりませんよね。(笑)
 
クラスをふたつのグループに分けて、それぞれの作曲家の曲を聴く。その曲風から人物像などを考察したり、図書館やインターネットでそれぞれの作曲家の生い立ちや曲に込められた思いなどをリサーチ。リサーチ結果をプレゼンテーションして、ディベートを行うというものでした。
 
日本ではまず明確な問題が与えられ、それに対する唯一の解を答える、時にはそのまま覚えるという、知識習得に重きを置いた授業スタイルが根強く残っている様に思います。カナダの教育はそうではなく、課題を自ら見つけ、「考え、仲間と討論して、それを発表して伝える」という要素が大きい様に思います。
 
これからは「人生100年時代」とも言われています。そんな時代を生きていく子供達には、カナダの様なアクティブラーニングを取り入れた教育方法がより適しているのかなと思っています。

カナダは「こんな世界だったらいいな」を示している国のひとつだと思う。


Photo:カナダ観光局 アルゴンキン州立公園 (voyageur quest)
トロントから車で3時間のアルゴンキン州立公園には野生動物も住む広大な大自然が広がるエリア。

− プライベートのお話も少しお伺いさせて下さい。トロントでの休日はどのように過ごされていますか?

トロント生活も長くなって来ましたので、観光や短期間の旅行は一通り行った感がありますね。(苦笑) 最近は夏になると同世代の男だけ7〜8人が集まり、トロント近郊に泊まりがけでキャンプに出かけるのが楽しみです。「オヤジ・キャンプ」と呼んでいるんですが、これが本当に楽しい。

カナダ人が何年かに一度、日常生活を離れて、同性の友人だけでラスベガスに旅をしたり、シャンパン・パーティをしたり、といったあのノリです。「オヤジ・キャンプ」ではレイクサイドで満点の星空を見ながらお酒を飲み、夜通しくだらない話を語り合って、翌日はハイキングやカヌーをしたりします。トロントは近くにアルゴンキンパークの様な自然公園やキャンプ場も豊富なので、家族や友人とアウトドアを楽しむには、とてもいい環境ですね。
 

− トロント生活も6年目を迎えられるわけですが、お気に入りのレストランなどがあれば教えてください。

日本食レストランで言うと、個人的にKoyoiは外せません。ダウンタウンでお店選びに迷ったらとりあえず、という感じです(笑)りょう次もお気に入りですね。

日本酒や焼酎もあり、冬はもつ鍋も食べられるKoyoiは、日本人にとってありがたい居酒屋レストラン。

オフィスの周りはレストランも豊富で、中でもPAIのタイ料理はオススメですね。トロントはマルチカルチャーの国なので、いろんな国の本格的な料理が手軽に食べられるのも魅力ですよね。

− トロントに駐在されている皆さん、これから海外で仕事がしたいと思っていらっしゃる皆さんに一言お願い致します。

カナダという国の世間一般的なイメージを考えた時に、どこか地味というか、大自然以外に際立った印象がない・・・。なんとなく「いい国だよね」ぐらいで留まっている気がします。ただ、実際に暮らしてみると、カナダ人は本当に優しくて、心にゆとりがあり、LGBTや移民、異なる価値観を持つ人に対しても寛大です。大袈裟に言えば、世界中の人が「自分が自分らしくいられる国としてあるべき姿」の一つを、世界に示している国であるようにも思います。
 
ここトロントも、北米第4位の大都市でありながら、多様性を尊重し、インクルーシブな素晴らしい都市だと思います。毎年、「住みたい都市」のランキングで上位に選ばれるのも納得できます。

日本も世界に誇るべき素晴らしい国ですが、「心の豊かさ」や「人間らしさ」という点では、カナダでの生活で学ぶことが大いあるように感じています。変動性が高く、不確実で複雑な今だからこそ、トロントに住み、学び、ビジネスを行うのはとても良いチャンスだと思います。

◾️久保 恵一(くぼ けいいち)さん

慶應義塾大学卒業後、(株)電通に入社。電通カナダ社とボス社の統合に伴い、2012年に駐在員として赴任。カナダの教育・生活環境が気に入り、家族と共にカナダ移住を決断。現在は電通ボス社の
International Development担当のVice Presidentとして勤務。仕事の傍ら、自身の子育て経験やカナダの教育制度を紹介するウェブサイト、イキヌキリョクの運営、JCCC(日系文化会館)の理事も務める。

◾️電通ボス
1995年に設立された電通カナダ社と、モントリオールのトップ広告会社であったボス社の経営統合に伴い、2012年に設立。現在はトロントとモントリオール、ニューヨークにオフィスを構える。
カナダ国内の企業はもちろん、日本企業が世界中で展開するグローバル・ブランディング広告も手がける。
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